すばらしき映画音楽たち(2016)
Score: A Film Music Documentary(2016)
監督:マット・シュレイダー
出演:ハンス・ジマー,
ダニー・エルフマン,
ジョン・ウィリアムズ,
ジェームズ・キャメロンetc
評価:85点
毎年、新宿シネマカリテで、DOPEな作品を上映しまくるカリコレというイベントが開かれます。今年は、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたオーストラリア映画「タンナ」を観ようと思っていたのだが、時間が取れず、このまま行かないであろうと思っていた。しかしながら、Twitterである映画が雑纂されているのを知った。それは「すばらしき映画音楽たち」というドキュメンタリー映画。カリコレではたった数回しかない上映ほとんどが満席になり、あまりの好評で追加上映、そしてカリコレ終了後、イメージフォーラム等で再上映が決まった作品です。たまたま、新宿に用事があったので、このカリコレ追加上映にて観てきました。
ブンブン2日前に予約したのだが、1日前には完売するほどやはり人気作らしい。果たしてどうだろうか?
「すばらしき映画音楽たち」概要
映画の裏方・映画音楽。しかしながら、映画初期から映画音楽は、映画が傑作か否かを決定づける大事な存在だった。そんな映画音楽たちの知られざる誕生の様子をジェームズ・キャメロン、ハンス・ジマー等の映画人へのインタビューを通じ明らかにしていく…これぞ映画愛!映画好きはMUST WATCHな一本
観る前は、正直「なんかDVDの特典映像みたいな作品だなー。こんなので泣けるの?」と疑心暗鬼でした。しかし、蓋を開けてびっくり、映画音楽に携わるクリエーターたちの熱いドラマ、そしてドキュメンタリーのクセして、ベタな映画音楽ばかりあつかっているのに、こうもドラマチックな作品でした。
本作は、映画史初期の映画音楽から入る。「サイレント映画は実はサイレント映画ではない」というシネフィルにとっては有名な話から入る。ワーリッツァー社のサイレント映画用キーボードを魅せ、そして「映画に音楽がなかったら、映画はつまらなかっただろう。」「傑作も傑作ではなくなっていただろう」という話をヒッチコックの「サイコ」を例に論理的に話す。
映画音楽がオーケストラや従来のクラシック、ジャズと違うところは、人が聴くに堪えかねる不協和音をも聴かせることができる。それが映画音楽最大の発明なんだというのを「サイコ」を例に語られ、ちょっと油断していたな、目から鱗やんとちょっと気持ちが画面に前のめりになる。
そして、このドキュメンタリー自身が映画音楽の重要性を訴えている為か、一切の妥協も許さない、緻密な映画音楽の魅せっぷり、並べっぷりに驚かされる。このドキュメンタリー時代も映画音楽に拘っているのか!と圧倒される。
そして語られるネタも、軽い企画だったらゼッタイ取材しきれないような領域。それこそ「インターステラー」等今のハリウッドを支える巨匠作曲家ハンス・ジマーが「重圧に耐えきらないとき、マジで『ジョン・ウィリアムズにお願いして』と言おうと思った」と弱音を吐く、重すぎる責任に耐えつつ無名の楽器を探求し、そこからまだ見ぬ未来の音楽を掴もうとする、映画が完成したら映画館に行き観客をチェックするといった、シネフィルでも知らないような世界が数多登場する。
パンフレット(400円と破格の安さに対して読み応え十分ありました)によると、本作の監督マット・シュレーダーはアメリカ最大級の放送局CBSを退社してまでして製作しているとのこと。しかもCBS時代から映画ファンとして映画音楽のドキュメンタリーを作りたいとハリウッドのプロダクションにアプローチをかけるものの数年間無視されていた悲しい状況下から作られた作品だということも分かりました。(マジで良いパンフレットだから、これ以上は語らないでおこう。みんな買おう!)
そりゃ、感動して涙が出る訳だ。映画ファン満足度がここまで高いのも納得、映画好きの為の愛の映画でした。
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