【ネタバレ/解説】「ハクソー・リッジ」と「沈黙」、そして童貞映画「早春」との意外な関係

ハクソー・リッジ(2016)
HACKSAW RIDGE(2016)

監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、
サム・ワーシントン、
テリーサ・パーマーetc

評価:85点

[blogcard url=”https://news.yahoo.co.jp/pickup/6244506”] ハリウッドの嫌われ者にして天才ことメル・ギブソンが「アポカリプス」以来10年ぶりに映画を撮った!それが「ハクソー・リッジ」です!沖縄戦前田高知の激戦を撮った本作は、アカデミー賞で撮影賞と録音賞を受賞しました。日本では、沖縄の人への忖度もあり、なかなか「日本人こそ観て欲しい沖縄戦の映画」ということが宣伝されていないのですが、果たして…ブンブン、TOHOシネマズ新宿で観てきましたよ!

「ハクソー・リッジ」あらすじ

良心的兵役拒否者としてアメリカ史上初めて、名誉勲章をもらったデズモンド・ドスの実話を映画化。人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンド・ドスは、周りが軍人になっていく姿を見て、自分も軍人になろうと出願する。しかし、銃を一切持てない彼は、軍部と対立する。対立の末に、衛生兵になったデズモンドは難攻不落の「ハクソー・リッジ」へと向かうが…

人…死んでいるだろう!!!

メル・ギブソンの新作はあまりメディアでは語られていないが、沖縄戦を描いている。日本人からすると、沖縄戦はアメリカが強かったという印象を受ける。負けたしね。しかしながら、本作を観ると日本軍が怖いほど強かったことがよく分かる。

難攻不落のハクソー・リッジ。6度も部隊を派遣するが日本軍を倒せない。その絶望感をメル・ギブソンは、「死者ゼッタイいるだろう」と思う鬼畜なカメラワークど爆発、銃撃戦で見事に演出している。
戦闘が始まると、軍艦からハクソー・リッジに砲弾を撃ち込み火の海にする。観客も兵士も「流石に日本軍死んだだろう」と思う。しかしながら、日本軍は全く倒れていない。次から次へと死をも恐れずKAMIKAZEを決めてくる。その時の絶望感に打ちのめされた。しかも、後半80分くらい、全て手数があまりに多い銃撃戦なのでひえーと悲鳴をあげる。

YAHOO!ニュースによると、メル・ギブソンは日本軍役であるエキストラの人の演技にもこだわったそうです。士気が低くなっている日本人エキストラに対し次のような檄を飛ばしたとのこと。


ここは君たちの土地なのに、彼らが侵略してきているんだ。彼らに土地を奪わせるんじゃない。
(YAHOO!ニュース「メル・ギブソン、10年ぶり監督復帰を決心させた銃を持たない兵士の勇気」より

)

これはガーフィールド「信仰映画」第二部だ!

だだ、本作は戦闘シーンだけではなく脚本も素晴らしい。これが意外だった。

物語の前半では、銃を持てないデズモンドと軍の対立が描かれている。通常の映画なら、鬼軍曹的キャラクターが主人公をボコボコにするのだが、本作は違う。鬼軍曹は訓練責任者として非常に人間味があります。尊敬したくなるような人物なのです。怖いけどユーモア溢れ、鬼畜だが暴力に訴えない。だからこそ、デズモンドの信仰心が浮き出てくる。

まるで「沈黙」のイッセー尾形のように、「銃を持つだけでいいから」「形式だけでいいから」という囁きにいかに立ち向かっていくか?そして、死や殺戮を恐れぬ日本軍を前に如何に銃を持たず勝つのか?本作のテーマである信仰心をもしっかり描ききったメル・ギブソンに感動しました。

そして、驚いたことに「沈黙

」で主人公を演じたのも、本作と同様アンドリュー・ガーフィールドではありませんか!どちらも、決して甘い囁きに負けることなく、祈り続けた男の狂気を描いている。そして、アンドリュー・ガーフィールドは顔を見ると軟弱そうなだけに、不屈の心が画面からにじみ出ることにじみ出ること。凄まじいガーフィールド「信仰映画」第二部であった。

前半のデートシーンの狂気

本作の前半30分は、童貞映画としても傑作です。ナースの女の子に一目惚れしたデズモンド君のナンパ物語が繰り広げられるのだが、当ブログでも紹介したスコリモフスキ監督伝説の童貞映画「早春(DEEP END)」

を彷彿させる狂気っぷりに大爆笑だった。

女の子慣れしていないデズモンド君の、ナンパの仕方がまず可笑しい。毎日のように献血に訪れるデズモンド君。ナースは「毎日は献血できないよ」という。するとデズモンド君は「血を返してくれ」と言うではありませんか!デズモンドがイケメンだから許されているわけで、ブスがやったらお縄通報者です。しかも、なんとか映画館デートに誘ったデズモンド君は、劇場でいちゃついているカップルを見て嫉妬し始める。「はぁはぁ、俺もイチャツキタイ!!!!」と思い始めるデズモンド君の目が狂気でしかない。このシークエンスは、恐らくスコリモフスキの「早春」を意識したのではと思うほどそっくりでした。

このように、本作は激しい戦争アクションシーン以外にも見所が沢山あります。

そしてこれは、映画館の大スクリーンで観て欲しい!

日本人こそ観てほしい!

なんなら学校の授業で観せたい(PG-12だしね)!映画でした。

おまけ:「激動の昭和史 沖縄決戦」との比較がオススメ

映画好きの知人から、本作と岡本喜八監督の「激動の昭和史 沖縄決戦」との比較をオススメされました。本作の舞台となっている、前田高知の戦いを日本軍側から描いた作品です。今では決して撮ることの出来ない、爆発シーンに熱くなること間違いなし!!近日、ブログ記事にて紹介します!

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