海は燃えている
イタリア最南端の小さな島(2016)
Fuocoammare(2016)
監督:ジャンフランコ・ロージ
出演:ドナテッラ・パレルモ、
ジャンフランコ・ロージ、
セルジュ・ラルー、
カミーユ・レムルetc
評価:55点
世界三大映画祭初となる
2つの映画祭で最高賞を獲った
ドキュメンタリー作家
ジャンフランコ・ロージ監督の
ベルリン国際映画祭金熊賞
受賞作品「海は燃えている」を
Bunkamuraル・シネマで観てきた。
原題のFuocoammareは
イタリア語の
Fuoco(火)とmare(海)を
掛け合わせた造語で、
その名の通り「火の海」なのだが、
どういった作品なのでしょうか?
「海は燃えている」概要
イタリア最南端にある小さなランペドゥーサ島を舞台に、
船乗りを夢見る少年の日常と、
毎晩のように北アフリカから
やってくる難民船を
救助・支援する部隊を
対比させ、平和な島に
忍び寄る影をあぶり出していく…
経済移民の真実
先日、卒業旅行でマルタに
訪れたのだが、
その時にガイドさんがこう語っていた。
「マルタ島はリゾート地として
有名なんだけれど、実は難民大国で、
毎日のように沈没しそうな船で
難民が押し寄せるの。
マルタの賃金は安いのだけれども、
それでもよりよい生活を求める
経済難民がアフリカから押し寄せてくるの。」
確かに、道路にはやたらと
貧しいアフリカ系の
人が多かったのだが、
旅行中はそこまで実感が湧かなかった。
しかし、本作を観ると
強烈にその知られざる真実を
突きつけられた。
物語の舞台は、
マルタ以上に
アフリカに近い
ランペドゥーサ島です。
そこでは、少年が友だちと
パチンコを作って、
サボテンを的に遊び、
兄貴分から船の漕ぎ方を
教わる平和な
生活を送っている。
しかし、画面が切り替わると、
ランペドゥーサ島近海で
経済難民の船が難破しており、
救援を求めている。
海上警備隊が、毎晩の如く
100~300人ぐらいの
大量の難民を乗せた船を
救っている。
一般的な戦争で家を壊されて、
彷徨う羽目になる
戦争・紛争難民は全体の
5%に過ぎない。残りは、
経済難民と呼ばれる、
「少しでも豊かになりたい」と
想い命がけで国を渡り
あるっているのだが、
実際にその難民船を観たとき、
ブンブンの言葉は失わざる
得なかった。
よく世界史の教科書に載っている、
インド人が電車にすし詰めに
なっている写真があるが、
まさに、あのまんま。
足の踏み場もないような
人・人・人の山が、
今にも沈没しそうな程の
ボロ船を支配している。
「女と子供しかいない」と
語っていたのに、実際に
観ると男だらけで、
膨大な人数で唖然とする。
「ワールド・ウォーZ」か!
とツッコみたくなる程に
おぞましい。
そう、本作は平和な島の
裏側で不気味に押し寄せる
難民の存在を明らかにした
ある種ホラー映画でした。
欧州では、EUを作り
ユーロを流通させることで、
経済の活性化を図ろうとした。
国境警備も緩くすることで
人の流れを活発化させ、
経済を発展させようとしてきた。
しかし、その結果
貧しい東欧や中東、
アフリカから
移民・経済難民が大量に
やってきて、
町の治安を乱し、
職を奪い、
結果として先進国が
他の貧しい国の負の
側面を痛み分けする羽目と
なった。
まさに本作の原題
「火の海」が表すように、
欲望の塊のような経済難民が
押し寄せることで平和が
燃えつきようとする
ヨーロッパの危機が
「海は燃えている」から
感じ取ることができる。
そう考えると、長期的な目で
イギリスのEU脱退は
正しかったのかもしれない。
2020年代にかけて
グローバル化で世界が皆、
痛み分けする時代から、
各国の問題は各々で解決する
難民は発生国で食い止めるよう
各国が支援する世の中に
なっていくのではないだろうか?
ある種の、移民・難民のあり方を
感じ取ることの出来る作品でした。
Bunkamuraル・シネマで
絶賛上映中なので
是非鑑賞あれ!
コメントを残す