【ドグマ95研究】「ラヴァーズ」フランス産ドグマ映画から観る移民問題

ラヴァーズ(1999)
LOVERS(1999)

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監督:ジャン=マルク・バール
出演:エロディ・ブシェーズ,
セルゲイ・トリフュノヴィチetc

評価:75点

もうすぐ学会発表だ!
ブンブンは当ブログでも
前々から語っているように
「1970年代デンマークポルノ映画が
ドグマ95に与えた影響」

で論文を執筆、
そして今月末に発表するのです
(テロでしかないww)。

意外と1970年代デンマークポルノは
観ていても、ドグマ95映画は
まだ5本ほどしか観ていないのを
受け、急遽4本Amazonで買いました。

ってことで、今日は「ラヴァーズ」を
取り上げます!
その前に、まずドグマ95について

ドグマ95とは?

ドグマ95とは、1995年にトリアー監督が
トマス・ヴィンターベアと共に立ち上げた映画運動。
「純血の誓い」と呼ばれる10の制約下で映画を製作した。

その制約をざっくり語ると
1.撮影はすべてロケ!セットで撮影はだめよ!
2.サントラの禁止
3.手持ちカメラで撮ろう!
4.白黒に頼るな!照明やレフ板なんて使うな!
5.CGなんてもんも使うな!
6.銃でバトルとか勘弁してね
7.「君の名は。」みたいな回想やタイムリープはダメよ
8.ジャンル映画(ゾンビとか「男はつらいよ」的なのはダメ)
9.35mmフィルムであること。
10.監督の名前はクレジットしないでね。

「セレブレーション」や「ミフネ」などといった作品が
国際的に評価され一世を風靡したが、
2002年に事務局が閉鎖し、わずか製作本数35本で幕を閉じた。

「ラヴァーズ」あらすじ

パリのある本屋に、男が画集を求めにやってくる。
店員の女性と男はその晩恋に落ち、
情事が始まった。
しかし、男は学生ビザが失効した
ユーゴ出身の不法移民で、
警察におびえる日々を送っている。
しかし、アル中で情緒不安定な彼は
クラブで喧嘩をしたり、公衆電話で
寝込んだりと落ち着くことができない。

果たして彼女は男の愛を最後まで受け止める
ことができるのか…

フランス製ドグマ95

ドグマ95に関する文献・論文では、
大抵、「セレブレーション」
「ミフネ」「イディオッツ」
「幸せになるためのイタリア語講座」
「しあわせな孤独」しか取り扱われない。

ドグマ95を研究する上で厄介な
他の国で製作されたドグマ映画を
無視しようとしている。

実はドグマ95の35作品の中には、
デンマーク以外で製作された作品が
潜んでいます。

例えば韓国映画の「Interview」や
今回紹介する「ラヴァーズ」がそうだ。

ドグマ95の凄いところは、
ヌーヴェルヴァーグや
シネマ・ノーヴォ、
ネオ・リアリスモなどといった
名だたる映画運動とは一線を画して、
国を超えた映画運動だったのだ!

「純血の誓い」で、
「ジャンルムービー」を禁止しているのは、
映画特有のお国柄すら廃しようとしたのでは
ないだろうか?

ただし、コレについてはあまりにも厄介なので、
ブンブンの論文では語りませんが…
もし大学院で研究するならやりたいテーマでもある。

閑話休題、さて今回のドグマ95は
フランスで作られたもの。
監督はあの「グラン・ブルー」
主演ジャン=マルク・バールだ。

ヌーヴェルヴァーグ等、
古きフレンチシネマならではの
甘くパリの町並みを存分に使った
恋愛劇の中に「移民問題」を
ねじ込むといった当時としては
新しい試みをしている。

とにかく、主人公がクズで…

そして、何より本作の恋愛の肝は
主人公のクズさだ。

ヤクでもやっているのか?
と思うほど情緒不安定で、
金もなく、プライドだけが
高い面倒くさい男。

そんな男にウッカリついて行ってしまった
本屋の店員。仕事に行かなきゃいけないのに、
「もう少し一緒にいようよ~」
と迫ったり、
デートも客が少ない店に入ると、
「こんな寂しい店は嫌だ。出る!」
と食事を諦めたりと、
ドン引きするほど男が
わがままなのだ。

おまけに、酒に酔って暴れるわ、
不法滞在問題をを抱えているわで
本当に酷いんだけれども、
女は尽くそうとする…
ドキュメンタリータッチだからこそ、
尽くす女と尽くされる男の
関係性に観客が引き込まれる内容となっている。

移民問題への暗示

先日、次期アメリカ大統領が
移民排斥派のドナルド・トランプ

なったと大騒ぎになったが、
彼が何故移民を排斥しようとしているかの
理由は本作を観ると見えてくるモノがある。

移民は故郷の経済が貧しく凄惨だから
一発逆転を目指してアメリカやフランス、
日本へと移住してくる。
しかし、そういう人は大抵、
語学力とかコミュ力とかプログラミング能力
などといったその国でがっつり稼ぐような力を
持っていない。
そうすると、どうしても飲食や
工場などといったサービス業の末端や
単純労働者にならざる得ない。

しかも、生きるのに必至なので相手の国の
文化も尊重しないので、文化破壊も起こる。

本作は、
この目の上にたんこぶだが、
なんとか共存していこうとする
1990~2000年代グローバル化の
動きを一つの恋愛に縮図として
表しているように見える。

イギリスのEU離脱に
ドナルド・トランプ台頭

世界が一つになることを
諦めようとしている今こそ、
再注目されるべき映画なんじゃ
ないかとつくづく感じた。

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