彼方から(2015)
Desde allá/FROM AFAR(2015)
監督:ロレンソ・ビガス
出演:アルフレド・カストロetc
もくじ
評価:50点
先日、新宿バルト9で開催された
ラテンビート映画祭に行って、
第72回ヴェネチア国際映画祭
金獅子賞を獲ったベネズエラ
映画「彼方から」を観てきた。
シネフィル歴8年のブンブンも
流石にベネズエラ映画は初めてだ。
中身はイカに…???
「彼方から」あらすじ
とある入れ歯職人のおじさん。彼は、親戚にも優しく
社交的で周りからは
快く見られていた。
しかし、おじさんには秘密がある。
それは、同性愛者だということ。
青年が上半身裸になり、
ズボンを下ろす様子に発情する
性癖をもった彼は、バスや街角で
青年に金を差し出して
家に連れ込んでいる。
そんなある日。
自動車整備工場で働く
青年をいつものように
買うのだが…
蒸し暑いハネケの爆誕!
ロレンソ・ビガス長編初監督作に
してヴェネチアを制した訳なのだが、
観て衝撃を受けた。
あまりの気持ち悪さに、
映画慣れしているブンブン、
吐きそうになったからだ。
というのも、ロレンソ・ビガス監督は
ミヒャエル・ハネケのファンと
インタビューで語っており、
それ故かハネケ独特の
冷酷で鬼畜な描写と、
ラテン系映画に多い
ねっとりとした感触が
同性愛映画と結びつき
とんでもないことになっているからだ!
まず、入れ歯職人の男の性癖を
説明する第一章から気持ちが悪い。
まず青年をおじさんがストーカーする。
青年に対するカメラフォーカスは
かなりボケており、見辛い。
そして、厭らしいカメラアングルが
入ったり抜けたりぐねぐねしながら、
おじさんは青年を買う。
家に呼ばれる青年。
おじさんは「後ろを向きズボンを脱げ」と言う。
青年がズボンを脱ごうとすると、
「少しズボンを戻せ」と言う。
ズボンでおしりが半分見える
状態で、おじさんは自慰を行う。
直接、自慰は魅せないものの、
ジュコジュコジュコという
不快な音が観客を襲う。
ひぇ~~~~!
絶叫だ。
そのまま、第二章本題、
自動車工場の青年を買うパートへと映る。
ベネズエラでしか描けない愛の物語
そして、所謂よくある
同性愛に目覚める系の物語が幕をあける。
自動車工場の青年は、
最初こそおじさんを殴り
金だけ奪って逃走するが、
オニューの自動車を
買うために、おじさんの元へ
通うようになりあれまあれまと
同性愛へ目覚めていく。
他の国でこの手の作品を描いたら
おそらく金獅子賞は無理だっただろう。
ベネズエラならではの問題と、
画面全体に立ちこめる
「ねっとり」としか感触の
理由が後半に行くと明らかになる
構造を絡めた結果、
独自性が出て金獅子賞に
結びついたと考えられる。
本作の舞台であるベネズエラ
の首都カラカスは日本の外務省から
危険レベル2
「不要不急の渡航は止めてください」
と言われている場所。
ベネズエラ専門ブログ
「ベネズエラで起きていること」を
読むといかにベネズエラ自体が
理不尽で生きるのも
命がけな国かということが分かります。
[blogcard url=”https://venezuelainjapanese.com/2016/07/29/26hguayana/”]
つまり何が言いたいかというと、
何故おじさんがねっとり厭らしい
形で青年を買っていたのか?
それは「自分が同性愛で特殊な性癖を
持っていることを他人に知られたくない」
からだ!
ただでさえ、日本やアメリカなど
の先進国でさえ同性愛者に対する
暴力は時たまニュースで目にする。
それが犯罪都市で露見したら、
袋だたきもいいところだ。
青年が自分の同性愛性を段々
制御できなくなるほど、
おじさん自身にも危険が迫る。
それ故にラストの衝撃且つ
謎に包まれたおじさんの行動に
説得力が出る。
ブンブンは正直、あまりの気持ち悪さで
合わない作品だったのだが、
日本からじゃ全く目に入ってこない
ベネズエラ生活の凄惨さを
観られる貴重な作品であることは
間違いない。
恐らく、日本公開はないだろう。
なんたって、公開したところで
映倫からR18を宣告されるのは
目に見えている。観客動員もそこまで
見込めないので、配給会社の人が
よっぽど推しが強い人でなければ
公開できないからだ。
だが、万が一観る機会があったら
挑戦してみてくれ!
ロレンソ・ビガス監督の短編
「Los elefantes nunca olvidan」
ロレンソ・ビガス監督が2003年にカンヌで公開したLos elefantes nunca olvidan
(像は決して忘れない)はyoutubeで
公開中。
父親殺しに行く、
カップルを描いた話。
全編のほとんどがトラックの上で展開され、
会話の緊迫感がよくできた作品となってます。
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