淵に立つ(2016)
HARMONIUM(2016)
監督:深田晃司
出演:浅野忠信、古舘寛治、
筒井真理子、太賀etc
評価:100点
」「さようなら
」で国内外から
注目されている新鋭・深田晃司監督の
最新作。本年度カンヌ国際映画祭
「ある視点」部門審査員賞を
受賞したとのことだが、
果たして…
「淵に立つ」あらすじ
金属加工工業を営む家族の前に、夫の旧友が現れる。
訳ありのその男を家に泊める
ことにした一家だが…
※ここからネタバレ全開なので、
未見のかたは速やかに映画館へ
行きましょう!
いやーないやーなホラー
黒沢清が闇を基調にしたホラーを描くのに対し、深田晃司監督は
光を基調として日本映画界に
新境地を開いた。
本作はホラーとは無関係なほど、
美しい秋の紅葉と
白いアイテムを映し出す。
しかしながら、浅野忠信扮する
白シャツの男だけでなく、
登場人物皆ただ立っているだけで
メチャクチャ怖いのだ。
いやーな気配の出し方に
特化しているのだ。
そして、その演出から、
いくら穴の奥底に埋めようとしても
這い出てくる「罪」に苦しめられる
古舘寛治扮する主人の地獄、
まさに淵に立たされた男の
緊迫が紡がれていく。
食事シーンに注目
そんな男の地獄は皮肉にも、
表面的には良く見える。
というのも食事シーンを注目すると
明らかに物語前半の方が
地獄に見えるのだ。
母親と娘は敬虔なクリスチャンで、
食事前にお祈りをする。
しかし、夫は無視して飯を食べる。
例え、お祈りに付き合っても
食事中の会話は少なく、
寒々しい。
まさに倦怠期という地獄がある。
それが、浅野忠信が娘に暴力を
奮って8年後の世界では、
夫婦として健全になっているのだ。
皮肉にも、従業員に過去を悟られないよう
偽りの夫婦を演じることで、
幸せの夫婦になってしまったのだ。
その時の食事シーンがあまり料理を
魅せないのに、不思議と
旨そうに、食べてみたくなるから怖い。
また、食事シーンと言えば、
浅野忠信を交えての食事シーンが
印象的だ。
浅野忠信は筒井真理子扮する奥さんと
娘としっかりお祈りし、飯を
美味しそうに頂く。
一方、古舘寛治は相変わらず
淡々とお祈りもせずに食事をする。
浅野忠信が筒井真理子の
心を鷲掴みにする一歩が
ここに集約されている。
こういう点からも本作の
食事シーンは上手いなと
唸らざる得ない。
白と赤の使い方に注目
また、「淵に立つ」では
白と赤の使い分けが絶妙である。
赤は主に血や悪魔、
死を象徴させるように使っており、
例えば浅野忠信が筒井真理子を
犯し、娘に暴力を振るう前には、
白い作業着を脱ぎ赤い服に変わる
描写を挟んでいる。
つまり、今まで隠してきた悪魔性を
開放させてからバイオレント
シーンへと移しているのである。
また、事件から8年後の
工場。若い従業員が実は、
浅野忠信の息子だと筒井真理子に
バレるきっかけは、赤いリュックサックだ。
まさに死亡フラグだ。
そして、ラスト。
筒井真理子が障がい者となった
娘と共に心中する際の
浅野忠信の幻影は赤い服を着ている。
徹底的に、赤に不吉さを背負わせているのだ。
それを強烈に象徴させるべく、
「白」を使うことで、
潔白の中の偽りがにじみ出てくる
仕組みとなっている。
このように精密に描かれた地獄は
「オーバーフェンス
」以上に今年を
代表とするミニシアター系邦画となった。
これはブンブンの今年のベストテン入り
当確であろう作品になったのであった。
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