映画 聲の形(2016)
THE SHAPE OF VOICE(2016)
監督:山田尚子
出演:入野自由、
早見沙織、松岡茉優etc
評価:90点
9/17(土)、「怒り」に「レッド・タートル」「BFG」、ミニシアター系だと「エル・クラン」に「トレジャー」と注目作が集中しすぎている日であった。
(「聲の形」漫画評はコチラ)
監督は、あの「映画 けいおん!」や「たまこラブストーリー」の山田尚子だ。
聾唖者の主人公西宮の声を演じるのは健常者の早見沙織。内容がないようなだけに、危険な香りがするのだが果たして…
↑TOHOシネマズ日本橋では、
映画戦線を見事に掌握!朝8:30の時点で席のほとんどが埋まっている状況でした。
「映画 聲の形」あらすじ
石田将也はわんぱく少年で小学校のガキ大将だ。ある日、彼の前に聾唖者の転校生西宮が現れる。聴覚障害を出汁に苛める石田。クラスメイトもそれに便乗して執拗ないじめがおこなわれる。しかし、ある日を境に石田は西宮同様苛められるようになり、彼と彼女は心を閉ざしてしまう。それから数年後、高校生になった石田は西宮に会いに行くのだが…
感動レイプ問題にナイフを差す超問題作
映画における、障がい者は一昔前までは「レインマン」「フォレスト・ガンプ」のように特殊な能力を有しサクセスストーリーへと繋がれることが多かった。
↑全編手話、登場人物全員聾唖者のギャングスタ映画「ザ・トライブ」はオススメですよ。最近海外では比較的、障がい者も悪役をやったり、徹底的にバカ役をやったりすることが多いが日本ではまだまだ、24時間テレビという感動レイプ番組が作られたり、とにかく映画やドラマでもお涙ちょうだいストーリーに持って行く風習がある。
それに、本気でナイフを突き立てた作品がコレだ!
原作1巻を読めば分かる通り、これは実写化したら韓国映画「トガニ」のようにR18レベルまでいきそうな程凄惨だ。ほんわかした萌えに溢れるヴィジュアルに反し、それを映画化、ましてや松竹が東宝の「君の名は。」に対抗したかのようなタイミングで出すとなったら、原作のキツさは緩和されるのではと観る前のブンブンは思ったのだが、全くもって観客に媚びることはなかった。
129分、ずっと観客の心臓にナイフを突き刺し、その上から塩とレモンをすり込む、精神的にキツい作品でした。「葛城事件」以上に、もう一度は観たくない。でも大傑作です。
音楽とキャラのバランスが絶妙
本作は、音楽の使い方とキャラクター配置のバランスが良い。音楽は、冒頭からTHE WHOの「My Generation」で始まる。この選曲が本当に本作のテーマソングとしてaiko「恋をしたのは」を超える程合っているのだ。
実際に歌詞には、
People try toput us down.
(人々が俺らを陥れようとしているのだ)
I hope I die before I get old.
(俺は年を取る前に死にたい)
等々、とにかく社会からの冷たい視線や抑圧、いじめから脱却したいことを歌っている曲なのだ。そして、石田の贖罪の気持ちともシンクロ率がやけに高い。
(My Generation歌詞和訳)
THE WHO特有の明るさと歌詞の鬱さがまさに、「聲の形」の世界観そのもの。山田尚子よ…冒頭で5億点だ!
そしてキャラクター配置。ブンブンは1巻しか読んでいないので、原作の人物配置はよくわからないが、植野という女子の使い方が上手い。植野は、クラスが西宮を養護する風潮に嫌気が差し、彼女を苛めるようになる。そして高校になろうとも西宮のことが許せなくて彼女に罵声を浴びせる。これは、「聲の形」の目的とも言えよう社会の偽善や欺瞞を浮き彫りにする凄まじいキャラクターである。
彼女を、嫌なタイミングで出すことで観客に不快感を与える。しかしながら、彼女の言っていることは観客の心の底にあるであろう邪心を代弁してくれている。例えば、合唱コンクールで彼女がいたせいで優勝できなかった。障がいがあるからって、西宮が楽な手話を覚えるように言う先生に対する不信感。笑っていればすべてが許されるような態度。あなたが、もし学生時代やどこかの機会で密に障がい者と接したことがあるのなら、一瞬は感じたことのあるような闇を植野というキャラクターは代弁しているのである。彼女がいなかったら、本作はぬるい、それこそ感動レイプになっていたであろう。
彼女がいるお陰で、石田の罪滅ぼしの旅に対する「自己満足のための贖罪か?」というクリティックな視点を盛り込むことに成功している。
早見沙織の演技が上手い
本作で、聾唖者・西宮の声を演じたのは早見沙織。所謂フツーの声優である。しかし、彼女はしっかり聾唖者とは何かをしっかり分析を行った上で演技をしているらしく、これがメチャクチャ上手い。京都アニメーションの作品らしい萌え感と、リアルな聾唖者の声を両立させる神業を披露した。恐らく、本作に難色を示す方はこの部分だとは思うが、全然聾唖者を馬鹿にしてない。むしろ、しっかり聾唖者の実態を社会に広めようという気概を感じさせる演技であった。
最後に…
主人公、石田は小学生時代のトラウマから人と目を見て話せなくなってしまうのだが、この描写がよく分かりすぎて泣けて来た。ブンブンも小学生の頃のイジメや、学校の先生に自閉症と誤解され検査を受けさせられたことがトラウマで人の顔が直視できなくなったことがあった。(今は大分改善されたが、それでも人の顔を見るのが怖い。目が泳ぎがちになりますw)本作では石田が信頼していない人の顔には×がついているのだが、あれは本当です。人を重度に信頼できなくなると、他人の顔に×がついて見えなくなる。直視できなくなります。それもあってか、ブンブンは「映画 聲の形」129分ずっと心にナイフが刺さり、首もとを締め付けられているような感じがしました。ひぇぇもう二度と観たくないm(_ _)m
↑入場者プレゼントの漫画、泣けましたよ!
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