“Ç”「サウルの息子」タル・ベーラの弟子がカンヌ、そしてアカデミー賞を狩る?

サウルの息子(2015)
Saul fia(2015)

監督:メネシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レベンテetc

評価:90点

監督デビュー作にしてカンヌ映画祭で
グランプリを獲り、行く先々で
敵なし現在有力映画賞18件
制圧し、もはや敵なし
アカデミー賞外国語映画賞も、
もし「黒衣の刺客」や
「ザ・クラブ」
がいても
殲滅するであろう怪物映画が
ついに日本上陸しました!

ブンブンもカンヌ映画祭時代から
気になっていた作品なので
初日にヒューマントラストシネマ
有楽町でウォッチしてきたぞい!

タル・ベーラの弟子やらかす

ナチスものの作品って大きく分けて二分される。
殺す側=「ナチス」か殺される側=「ユダヤ人」だ。
しかし、「ニーチェの馬」の鬼才タル・ベーラ
弟子は「中間」というゾンダーコマンドに目をつけた。

ビルケナウにあるアウシュビッツ収容所に
輸送されたユダヤ人って皆ガス室で
殺されたと思ったら違うことが本作で分かる。

一部の体力があったり技術を持っている
ユダヤ人は労働力としてナチス監視下の
もと、虐殺されたユダヤ人の遺体を処分する
仕事を担当するゾンダーコマンドに
就かされていた。

主人公のサウルはゾンダーコマンドとして
アウシュビッツで重労働をしていたら、
息子と思われる遺体を発見する。
むごい遺体処分法に耐えかねたサウルは
ナチスの監視をかいくぐって
ユダヤ式埋葬を行おうと
奮闘するのだ…

「地獄へようこそ」とはこれだ!

先日、凄惨なバス事故のせいで
公開延期となった「TOO YOUNG TO DIE」
に「地獄へようこそ」という名台詞があるが、
本作はそれに比べたら月とすっぽん
並の地獄を観客にも突きつける。

冒頭から長回しで、主人公の顔以外ピントを
合わせないぼやけまくった映像が展開される、
悲鳴や銃声が鳴り響いているため
身の危険を感じるが、どこから、
誰がどうなっているのか、主人公の
顔の隙間からかすかに見える
血しぶきから察さねばならないので
得体の知れない恐怖に陥る。

そしていつの間にか、場面はガス室の中へと
映っていき、血まみれの人を
掃除しているゾンダーコマンダや
死んだユダヤ人の遺品から金目のものを
回収するゾンダーコマンダが見えてきて
この世のものとは思えない地獄絵図が
しかもカラーで広がる。
なんか「神々のたそがれ」
カラーにした雰囲気を感じる。

CGが使えるこの時代だが、
本作では実写で無数の
ウジ虫以下同然で這いつくばって
同じ人種の殺戮を援護することで
自分を保っている地獄を
演出しているのだ。しかも
長回しに撮るので、
そこに人間が生きている。
まったくハリボテな気配すら
感じさせないのだ。

実は娯楽要素も…

そんな「サウルの息子」だが、
恐ろしいことに「娯楽」を感じさせる
部分があるのだ。

なんと、主人公サウルのミッションは
遺体の山から息子を探し出し、
尚且つ日本で言ったらお経を唱えられる
坊さん的存在を探しだし、
そしてナチスに隠れて埋葬
しようということで、
「オーシャンズ11」さながら
仲間(信用できそうにない人だらけ)
と協力プレイして
アイテムを集めたり賄賂で
買収したりして
ミッションクリアを目指していくのだ。

何度も窮地に陥るが、ものすごい
強運で生き残る。そして、
出オチだと思われた伏線が
キチンと回収するところも圧巻。

マジでメネシュ・ラースロー
恐ろしい子である…

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です