黄金のアデーレ 名画の帰還
Woman in Gold
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズetc
評価:70点
シューベルト、モーツアルト、ベートーベン
を生んだ芸術の街オーストリア。
そんなオーストリア・ウィーンに行ったら
誰でもクリムトを観に訪れる。
しかし、そんなクリムトの名画の一つ
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」を
アメリカに住む遺族がオーストリア政府
相手にナチスに奪われたものだから返して欲しい
と裁判を起こした実話があったのをご存じだろうか?
今回、大物女優ヘレン・ミレンと
デッドプール役者ライアン・レイノルズが
その実話を演じた「黄金のアデーレ 名画の帰還」
を観ていくぞ~
面倒なおばさんの心理に迫る
話は、転職した手の弁護士が82歳のおばあさんマリア・アルトマンから「オーストリアからナチス時代に奪われた名画を取り戻したい」。
と言い始めたことから始まる。
やる気に満ちあふれる新米弁護士は、
早速オーストリアに彼女を連れて行こうとすると、
「オーストリアには二度と帰りたくない」と言う。
普通、こんな人に会ったら嫌気が差すだろう。
この作品は丁寧に、何故このおばあさんが
オーストリアに帰りたくないかを回想の描写で
描く。ナチス時代にユダヤ人として虐げられ、
なんとしてでも亡命しようとした彼女。
クリムトが描いた親戚のアデーレの肖像画の所有権も
本来はマリアや親戚にあるはずなのに、
遺言状を適当に解釈されてナチス撤退後も
オーストリアにあるままである。
彼女はオーストリアで深い傷を負った。
故に、「名画を取り戻す」=忘れ去られつつある
ナチス時代のキズを社会に認知させる為だった。
決して金の為ではない。
観ていくと、段々弁護士の方が意識が
高くなり、マリアよりも積極的に行動し、
独裁的に物事を決めるようになる。
彼女は傷だらけになりながら過去を
正そうとしているだけにドンドン
弁護士のせいでキズが深くなってくる。
私もそうだが、若いうちは
過去なんて忘れれば良い。
今や未来を考えれば良い
と思ってしまいがちだが、
その気持ちによる行動が
時として過去に囚われた人
を傷つけてしまう。
展開的にも地味だし、
序盤の話が分かりにくい。
結局、大きなリスクのもと
裁判を成功させた二人だが、
残ったのは名声よりも空虚
だったりする後味の
悪い作品だが、
この作品は若い人に
観てもらいたい。
そして、老人の気持ちを
感じ取って頂きたい。
美しい街ウィーンに潜む闇に
触れられた作品でした。
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