ほとりの朔子(Au revoir l’été)
監督:深田晃司
出演:二階堂ふみ、鶴田真由etc
評価:60点
ナント映画祭グランプリを受賞し、
日本でも批評家を激アツに
させた映画「ほとりの朔子(さくこ)」
を観ました。
映像は夏にぴったりで、
画面サイズが特殊なのもあって
ノスタルジーを感じる一方、
夏休みに観るとちょっぴり
鬱になる映画ですぞw
何故あそこまでよそよそしいのか?
大学受験に失敗した少女朔子が叔母に連れられ、伯母の家に2週間ヴァカンスを
送るって話なのだが、
どこもかしこも余所余所しい。
相手に興味がないんじゃないかって思うほどに、
登場人物みんな嫌らしい返答ばかりする。
とりあえず会話を続けているようなー
特に、インドネシア語を翻訳する叔母の
返答がいちいちとげがアリかなりの
不快感を与えます。
ただ、その理由が2週間の中の会話で
どんどん明らかになっていく。
よく映画って、映像で伏線回収を
行うのだが、この作品は徹底して
リアリズムを上げるためにか、
会話の中でおおよそ謎や人間関係を
紐付けていく。
だから1時間耐えると、
段々謎が解明されていく
面白い仕掛けになっている。
そして、そんな不穏でドロドロな
人間関係を観て、主人公
朔子は自分の道を切り開こうとする。
日本語タイトルだと
どんなストーリーかわかりにくいのだが、
仏語タイトルのAu revoir l’été
(夏よさよなら)はまさに
直球でわかりやすい。
朔子のとらわれの夏からの解放が
タイトルにも表れている。
惜しい、教授と原発描写
観ていて、映像のクオリティも
高いし話の作り方も斬新なのだが、
諸刃の剣で綱渡りしすぎて
惜しい!って思ってしまうところも
いくつかある。
まず、先生の描写。
すごい群像劇は全ての
人物が絶妙に絡み合っている
ところにある。
しかし、どうも「先生」の描き方が
甘いなーと感じた。
確かに、目的もあるし
ホテルや伯母の家との絡みもあるが、
設定としてリアリティが薄く
「その設定必要?」と思ってしまう
ものがあった。
先生という要素を入れるのであれば、
舞台の地域に住む先生という役付けに
した方がすっきりしていると思う。
そして、二つ目は脱原発運動のシーン。
映画を観てない人には想像しかねると
思うが、何故か唐突に脱原発デモの
シーンが挿入される。
確かに、映画にメッセージ性をいれるのは
大事だが「脱原発」系を映画に入れるには
慎重を要する。
下手に表現すると、エラく臭いモン
になる。園子温の「希望の国」ですら
胡散臭くなり作品のクオリティを下げてしまう。
「ほとりの朔子」の反原発デモシーンは
明らかに不自然である。
反原発デモで壇上にて物語らねばならなくなった
少年のくだりはトリッキーすぎて、
エディプス・コンプレックスを描く手段としては
変すぎたし、何故朔子はたまたまUstreamで
このデモを観ていたかもしっかり描いていないが故に
不自然。
映画の世界観に、明らかに場違いなシーンが
入っているが故に物語が崩れてしまい
ちと残念でした。
とは言え、面白いことには変わりはない。
いやーな夏休みを味わいたい
人にオススメである。
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