ドカベン

2021映画

『ドカベン(1977/実写版)』鈴木則文の映画論

学校にやってきた山田は、巨大なガキ大将・岩鬼正美(玄田哲章)に絡まれる。しかし、売られた喧嘩は買わない。土下座をし始める山田に憤怒し、パンチを喰らわせると、ヒョイと交わし、地面に腕がめりこむ。授業が始まると、岩鬼正美は早弁を始める。巨大な弁当箱を開き、高速でご飯を口の中に放りいれ、鯛を骨まで食い尽くすのを早回しで描く。滑稽だ。岩鬼には好きな人がいる。夏川夏子(丸山裕子)に全力を注いでいるのだが、彼女は化粧がケバくお世辞にも美人とは言えない。しかし、彼女にひたすら愛を捧げるところに現在でも耐えうるルッキズムを超えた愛が描かれている。彼女に会う為に音楽室にいく場面に注目していただきたい。彼は、口に加えた木の棒から花を咲かせる程興奮している。チャイコフスキーを流暢に弾き鳴らすのだが、彼は死角で気づかない。チャイコフスキーヲタクの野郎が弾いていることに。長い時間かけて、全然正体に気づかない様子を滑稽に描き、結末として、チャイコフスキー野郎を2km先まで放り投げるオチをつけている。