トーマスハイゼ

2021映画

【超長尺映画】『ハイゼ家 百年』百年の「豊饒な」孤独

問題の30分以上に及ぶ強制移送されたオーストリア系ユダヤ人のリストは体感時間ではなく、本当に30分存在したのだ。従来もクロード・ランズマン『ソビブル、1943年10月14日午後4時』のラストで収容所に収監された人のリストを読み上げられる場面があるが、本作は変わった演出となっている。目の前に映画のエンドロールさながらスクロールされるリストに対して、そのリストとは無関係に見える手紙のやりとりが読まれるのだ。リストの日付も全く関係ない。これはどういうことか。じっくりと観ていくと段々と納得してくる。手紙では段々と社会情勢が悪化し、石炭等の物資が手に入らなくなり、移送の為限られた荷物だけもって家から追い出されていく家族のやりとりが語られていく。そうです。我々は未来の視点から結末を「目」で追い、一方でその悲惨な未来に向かって突き進む様子を「耳」で追っているのだ。