『火葬人』歪んだ世界で真っすぐな瞳

火葬人(1969)
原題:Spalovač mrtvol
英題:Cremator

監督:ユライ・ヘルツ
出演:ルドルフ・フルシンスキー、ヴラスタ・フラモストヴァー、ヤナ・ステフノヴァー、ミロシュ・ヴォグニチュ、イジー・メンツェルetc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

チェコ映画傑作選で『火葬人』が上映される。過去に鑑賞していたものの、レビューを書き忘れていたのでここに書いていく。

『火葬人』あらすじ

第2次世界大戦前夜のチェコ、プラハを舞台に、葬儀社で働くごく普通の市民が、親ナチスの友人や社会情勢に影響され、破滅的な解決策へと駆り立てられていくさまを描いたダークコメディ。

プラハの小さな葬儀社で火葬人として働くカレル・コップフルキングルは、家族を愛する平凡な男だった。ある時、第1次世界大戦中にともに戦った戦友と再会するが、彼はナチ党の一員となっていた。友人に地元のユダヤ人社会を監視するよう説得されたカレルは、次第に友人や社会情勢に影響されていき……。

いたって普通の人間が加害者となっていく姿を、美しくもおどろおどろしい表現主義的な映像で描き出す。全体主義イデオロギーの恐怖を暴いた作品で、本国チェコでは公開禁止となり、共産主義政権が倒れる1990年まで上映できなかった。第5回シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ受賞。日本では2026年4月、チェコ・ヌーベルバーグの名作を特集した「チェコ映画傑作選」にて劇場初公開。

映画.comより引用

歪んだ世界で真っすぐな瞳

『高速ヴァンパイア』の監督だけあって、演出が尖っている。まず、冒頭で紙を切り張りしながらタイトルを出していく演出が挿入される。映画は広角レンズで撮ったような歪みの中で展開される。社会に対して盲目であろう純朴な瞳を有する民の中で、不気味な程小奇麗なおっさんカレルにフォーカスが当たる。彼は火葬場で働いている平凡な男なのだが、ダライ・ラマの輪廻転生に影響を受けているようである。そんな彼が段々ナチスに取り込まれていき、虐殺に手を貸すようになる。映画自体はシンプルなのだが、歪んだ空間に真っすぐな瞳を配置する演出がユニークであり惹き込まれる。カレルにとっては正常であり論理的であるが、世界はそれにより歪んでいる様を視覚的に表現できている。また、後半の火葬場での惨劇はアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所のガス室跡を彷彿とさせるものがあり背筋が凍る。今回のチェコ映画傑作選でユライ・ヘルツに注目が集まることを期待したい。