La grazia(2025)
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:トニ・セルヴィッロ、アンナ・フェルゼッティ、オルランド・チンクェetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
パオロ・ソレンティーノの政治劇はパブロ・ラライン同様、地位が高い者のわかり得ない孤独を捉えている。パブロ・ララインと異なる点は単なる男女の差だけでなく、社会との距離感にある。ソレンティーノの作品では大衆の存在は完全に分離されている。領域の外側に追いやられているのである。故に、おじさんよしよし映画の側面が強く臭みを抱くわけだ。第82回ヴェネツィア国際映画祭でトニ・セルヴィッロが男優賞を受賞した『La grazia』もまた、その系譜の一本であったが、問題点込みで興味深く鑑賞した。
『La grazia』あらすじ
A widowed Italian president faces moral crises over euthanasia legislation and pardoning killers while grappling with his late wife’s infidelity during his final months in office.
訳:イタリアの未亡人大統領は、在任最後の数か月間、亡き妻の不貞と格闘しながら、安楽死法の制定や殺人犯の恩赦をめぐる道徳的危機に直面している。
妻の不倫の謎が死から生の生から死を決める
セルジオ・マッタレッラ元イタリア大統領が殺人で有罪判決を受けたもののアルツハイマーを患った男に対して恩赦を与えた話からインスピレーションを受けた本作は2つの決断を宙吊りにする存在にしょうもなさがあり、それ故の問題作となっている。任期終了直前のマリアノ・デ・サンティス大統領は頑固故「Cemento Armato(鉄筋コンクリート)」と呼ばれている。右腕たちに仕事を任せ、黄昏に生きている。
そんな彼の最期の仕事として、恩赦を与えるかといった決断と安楽死を合法化する法律を制定する決断がある。要するに死から生の決断と生から死の決断という正反対の仕事を同時に行う必要があるのだ。そんな彼の決断を鈍らせるノイズとして、かつての妻が不倫をしていたかもしれない疑惑である。教皇や側近たちとの議論以上にノイズとなる過去。果たして彼は決断できるのだろうか?
映画は荘厳でゆったりとしたペース、時には過剰なまでにスローモーションな運動の中でEDMを流し込む独特な演出をしている。これは決断できない人の脳内リソースがノイズで埋め尽くされてしまっていることを象徴している。一見すると冷静を保って頑固おやじとして前進できていない状況もあるがままにさせているように思えて、脳内では脳汁がドバドバ出ているあの感覚を表現している点は評価できる。
一方で昨今、ヨーロッパ映画で作られる傾向がある安楽死を題材とした作品にありがちだが、問題の本質に迫っておらず究極の選択といった記号として安楽死を消費してしまっている印象を受ける。児玉真美 「安楽死が合法の国で起こっていること」を読む限り、安楽死の制度は同調圧力などによって自分の意志以外のところで死がもたらされてしまう致命的な問題を有しているとのこと。だが、ヨーロッパ映画はそういったところに踏み込んでおらず、あたかも自分の意志決定の物語の要素として組み込んでしまっている傾向がある。本作も案の定、記号的に安楽死を使用していたのでよくないと感じた。










