『ハッチング 孵化』位相をずらし続けるモンスター映画

ハッチング 孵化(2022)
Pahanhautoja

監督:ハンナ・ベルイホルム
出演:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン、レイノ・ノルディン、オイヴァ・オリラetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第76回ベルリン国際映画祭でハンナ・ベルイホルム監督『Nightborn』が公開されるので過去作『ハッチング 孵化』を観た。

『ハッチング 孵化』あらすじ

長女が見つけた謎の卵の孵化をきっかけに起こる恐ろしい事件により、家族の真の姿が浮き彫りになっていく様を描いたフィンランド製ホラー。北欧フィンランドで家族と暮らす12歳の少女ティンヤ。完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすため、すべてを我慢し自分を抑えるようになった彼女は、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。ティンヤが家族には内緒で、自分のベッドで温め続けた卵は、やがて大きくなり、遂には孵化する。卵から生まれた「それ」は、幸福に見える家族の仮面を剥ぎ取っていく。監督は世界の映画祭で短編作品が高い評価を受け、今回が長編デビューとなる新鋭女性監督ハンナ・ベルイホルム。

映画.comより引用

位相をずらし続けるモンスター映画

本作は、一般的なモンスター映画の皮を被り、往年のホラー映画のクリシェを擦りながら絶妙に位相をずらすことで独自性を出した映画である。コロンブスの卵的、意外な角度よりハンナ・ベルイホルム監督の今後に期待したいものがある。

ヒッチコック『鳥』ばりにカラスが部屋に侵入し死闘の末、抹殺するところから始まる。そのトラウマを抱えた少女は森で卵を見つけ、部屋で育て始める。やがて卵は巨大化し孵化するのだが、それは家族を脅かす地獄の始まりであった。

映画は最初の30分ぐらいであっという間に卵を孵化させる。その孵化した存在を匿うアクションの中で、生理現象に悩む思春期の特性を形成していく。映画は、幸福な家族を装う空間の中で抑圧された少女をドストエフスキー「二重人格」的アプローチで描いていくのだが、単に家族が少女とモンスターを鎮めようとする構図にならず、これを通じて機能不全な家族像を暴こうとしている点が興味深い。

映画はいつしか心象世界のように現実離れした、壊れた空間、極端に漂白された空間、現実的な空間を反復横跳びしながら抑圧がオーバーフローし、狂気となった存在と対峙していくのである。

映画自体はそこまでハマらなかったものの、『Nightborn』への期待が高まる一作であった。