【第38回東京国際映画祭】『ハッピー・バースデイ』満たされぬ渇望のグロテスクさについて

ハッピー・バースデイ(2025)
Happy Birthday

監督:サラ・ゴーヘル
出演:ネリー・カリム、ハナン・モタウィ、ドーハ・ラマダンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第38回東京国際映画祭のダークホース枠として会期前から話題となっていた『ハッピー・バースデイ』。宣材写真こそ、よくある子ども映画といった感じだが、これは猛毒な一本だ!

『ハッピー・バースデイ』あらすじ

主人公は、カイロの裕福な家庭でメイドとして働く8歳の少女トーハ。トーハは、雇い主の娘で親友のネリーの誕生日パーティーを開くために奔走する。それは親友の誕生日を一緒に祝いたいためだったが、そんなトーハの前に現実が立ちはだかる。誕生日という親しみやすいモチーフを扱いつつ、社会格差の問題を浮かび上がらせる作品。トライベッカ映画祭で最優秀作品賞、脚本賞、ノラ・エフロン賞の3賞を受賞した。

※第38回東京国際映画祭より引用

満たされぬ渇望のグロテスクさについて

主人公の少女の生活は不自由に溢れている。経済的関係でドレスを買ってもらおうにも親の「金が足りないの」といった言葉を貰う。煌びやかさは手を伸ばしても手に入らず、魚を取る。体臭を消すために服の上からペットボトルに入った恐らく洗剤を薄めたであろう液体を被る。彼女はそんな貧乏臭さに耐えきれず反抗している。

それはやがて力づくでパーティに参加するにまで至るのだが、パーティの渦中にいながらも階級差を突きつけられ、その場に溶け込むことはない。子どもってこともあり、知り合いとの険悪なムードはマジックという魔法で消えかける、ハッピーエンドになりそうな予兆を抱えるが、大人の事情で粉砕される。

明らかに大人になった際に性格が歪むであろう困難さを描いている一方で、誰がどうやってもなんともならないような地獄に圧倒された。