愛殺 レストア版(1981)
監督:パトリック・タム
出演:チャン・クォチュー、ブリジット・リン、チャーリー・チン、アン・ホイ、ティナ・ラウetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第38回東京国際映画祭にてパトリック・タムの『愛殺 レストア版』が上映された。本作は一時期、シネフィル界隈で話題となった作品でカルト的人気を博している一本。ようやく観ることができた。
『愛殺 レストア版』あらすじ
2023年の東京国際映画祭で代表作『烈火青春』(82)レストア版が上映された、香港ニューウェーブの巨匠パトリック・タムの初期の傑作。香港、台湾映画界の大スター女優ブリジット・リンを主演に迎え、男女の錯綜した恋愛関係とその果てに起こる惨劇を、ゴダールやアントニオーニを連想させるスタイリッシュな映像で描く。香港のフィルムアーカイブ「M+Cinema」が修復したレストア版のワールドプレミア上映。
※第38回東京国際映画祭より画像引用
サイコパスと内なる存在のような女性たち
本作は前半と後半でがらりと作風が変わる。序盤はサイコパス男がサイコパスになるまでの過程を描いている。モンドリアンを始めとする抽象画をインテリアにしながら対話を重視するアプローチはエリック・ロメール『満月の夜』を彷彿とさせるのだが、意外なことに本作の方が先に制作されている。
後半は、いよいよサイコパス男の異常さが現出し、次から次へと女性を惨殺していくわけだが、どこかその女性たちの実体が伴っていないように思える。視点は女性にあるのだが、サイコパス男の内面、統合失調症的な空間が広がっているように思えるのだ。そしてアクションはプロセスのA to Zを描くことなく途中でぶった切る。故に、内なる他者との闘いのような描写に見える。
日本でこの手の描写を行うなら、「〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン」のようなアニメ的演出になりがちなのだが、こちらもヌーヴェルヴァーグを参照元としているため、同じ構図の応用として同様の演出が導出されていると考えることができる。
意外とそこまでホームランといった作品ではなかったのだが、興味深い一本であった。













