【第38回東京国際映画祭】『メアーズ・ネスト』ルイス・キャロルってバランス感覚優れていたんだなぁ

メアーズ・ネスト(2025)
Mare’s Nest

監督:ベン・リヴァース
出演:ムーン・グオ・バーカー

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第38回東京国際映画祭1発目はベン・リヴァース『メアーズ・ネスト』から始まった。ベン・リヴァースは5年ほど前に東京都写真美術館でナマケモノのインスタレーションを観たぐらいで映画としてのエンカウントは初となる。

『メアーズ・ネスト』あらすじ

2024年の東京国際映画祭で『ボーガンクロック』が上映された、ベン・リヴァースの最新作。アメリカの小説家ドン・デリーロの一幕劇を原作とし、大人がいなくなった終末的な世界を舞台に、ひとりで旅を続ける少女ムーンが、出会った子どもたちとの対話の中で自分の生き方を見つけようとするロードムービー。見る者に様々な解釈を可能とする作品だが、気候変動、パンデミック、地域社会の空洞化など、現在の世界が直面する様々な問題が、フィルムの質感を生かした独特の映像の中に描かれている。撮影は地中海に浮かぶスペイン領のメノルカ島などで行われたという。ロカルノ国際映画祭コンペティションで上映され、地球環境の問題に配慮した作品に贈られる「緑の豹賞」を受賞した。

※第38回東京国際映画祭サイトより引用

ルイス・キャロルってバランス感覚優れていたんだなぁ

冒頭で「原作ドン・デリーロ」と提示されのめり込むように映画と向き合う。亀を轢きそうになり、ハンドルを切った結果、木に衝突しひしゃげる車。中から少女が現れ、亀を片手に分子の話を詠唱しながら歩む。暖色と寒色が道路にて分断された空間を歩む少女はやがて別の子どもたちとエンカウントし、「時間とはなにか?」「言語とイメージの関係性」について哲学的な議論を交わす。

なるほど、プリミティブな存在として子どもだけを登場させ、単語と推論によるナラティブをメタ的に捉え解体するようなことをやろうとしているのだろう。しかし、映画は「フィネガンズ・ウェイク」よろしく迷走闇鍋と化す。90分ほどではあまりにも議論の焦点がとっ散らかり、ダンジョン的空間のロケーションは面白いが全体的に纏まりのなさが目立つ。

これを考えると、言葉遊びやサイズ変化などを介した非ユークリッド空間による人間関係の本質を捉えながら物語としても成立させた「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルは離れ業をやってのけたと言える。