『白爪草』VTuberの映画だが……

白爪草(2020)

出演:電脳少女シロ

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2022年、コロナ禍の虚無の中、VTuberにハマり始め、2023年から私自身VTuberとして活動するようになった。存在こそ知っていたが観る機会がなかったVTuberの映画『白爪草』をようやく観ることができた。本作は、テレビ番組「超人女子戦士ガリベンガーV」にも出演しているVTuber電脳少女シロが主演している作品である。

『白爪草』あらすじ

全キャストがVTuber(バーチャルYouTuber)で描かれるワンシチュエーションサスペンス。主演はテレビ番組「超人女子戦士ガリベンガーV」などでも人気の電脳少女シロ。フラワーショップ「花組」で働き、ごく普通の静かな日常を送っていた白椿蒼のもとに、服役していた双子の姉妹・白椿紅から6年ぶりに会いたいという連絡がくる。カウンセリングを受けながら日々を過ごしている蒼は、カウンセラーの桔梗にも相談し、意を決して紅と会うことにする。花組を再会の場所に指定し、花々に囲まれた部屋で紅の来訪を待つ蒼だったが、不安のために落ち着つかず、紅から逃げるように帰宅を考え始める。しかしその時、来客を告げるチャイムが鳴り……。

VTuberの映画だが……

まず、本作を観た時に、VTuberコンテンツがVTuberであるが故に自然とイングマール・ベルイマン『仮面/ペルソナ』たる構造を導出できているといった点にある。実際に名取さなが持つナラティブ、それを派生させたMV「きらめく絆創膏」からも感じ取ることができる。

さて、『白爪草』の場合、フラワーショップで働く白椿蒼の前に双子の白椿紅が現れ、肉体の乗っ取りを行う過程で、自己の葛藤を吐露していくといった内容である。自分の中にある邪悪な感情との対話を独り芝居のように行っていく、その中で蒼/紅の心理的境界線が曖昧となっていく。『仮面/ペルソナ』とは異なり差異のないアバターを電脳少女シロひとりで制御しているため、自己の分離と融合のメカニズムを描きやすい技術としてVTuberがあることがわかる。

一方で、VTuberを用いた映像演出に関して検証段階だったイメージがアリ、映画としての動きやギミックとしての面白さは感じられなかった。恐らく、ラドゥ・ジューデ監督がVTuberを扱ったらその技術に批評性が生まれると思う。