Otec(2025)
監督:Tereza Nvotová
出演:Milan Ondrík,Dominika Morávková-Zeleníková,Anna Geislerová etc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門に出品された『Otec』を観た。実話を基にした話であり、辛い話である一方、そのままストレートに映画にしたら、いらすとやポンチ絵でやる5chまとめ動画レベルの内容になってしまうものを撮影の妙で映画に昇華させたような作品であった。
『Otec』あらすじ
A successful man’s perfect life shatters when his baby disappears from daycare. His wife’s frantic call reveals a devastating truth about a memory lapse known as Forgotten Baby Syndrome, joining countless similar tragedies.
訳:成功していた男の完璧な人生は、赤ちゃんが保育園から姿を消したことで崩れ去る。妻の必死の電話が、「忘れ子症候群」と呼ばれる記憶喪失の衝撃的な真実を明かし、数え切れないほどの悲劇の仲間入りを果たす。
娘を後部座席に放置プレイした結果
本作は「赤ちゃん忘れ症候群」を描いた作品である。赤ちゃん忘れ症候群とは、大切な子の存在を忘れてしまうといったものである。主人公の男は、妻から娘を保育園に連れていくよう言われる。彼は仕事に忙殺されるような毎日を送っている。娘を保育園に連れて行ったと思っていたのだが、妻から「保育園に娘がいないんだけれど」と電話があり、ハッと駐車場へと向かう。この日は猛暑であった。娘は死亡してしまった。
『Otec』は「赤ちゃん忘れ症候群」により取り返しのつかないことをしてしまった者の苦悩とフラッシュバックにフォーカスを当てている。めまいのような回転するカメラワークを軸としているのだが、興味深いことに妻と夫では異なる回転の運動を与えている。妻は、悲しみが吹っ切れたかのようにリビングで回転して踊る。一方で、夫はめまい的回転の中で、トラウマだけは何度も突然に蘇るような演出が施されている。なんで、トラウマはすぐに記憶から引き出されるのに、あの日、「保育園に娘を送り届ける」といった記憶は抜け落ちたのだと自分を責める様が映像として表現できており、良かった。