『罪人たち』音楽はいいけどホラーアクション映画としては×

罪人たち(2025)
Sinners

監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン、ヘイリー・スタインフェルド、マイルズ・ケイトンジャック・オコンネルetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

日本では、ブラックムービーが劇場公開される確率は有名監督作であっても高くない。実際に今年はスパイク・リーが黒澤明の『天国と地獄』をリメイクした作品が配信スルーとなった。一般的に、映画ファンの期待と裏腹に興行面が渋いかららしく、大作となればシネコンで上映する必要があるので、収益とのバランス取りが難しいからだろう。そんな中、日本公開されるか不安の声があった『罪人たち』は無事劇場公開され、評判も良かった。しかし、何か不穏な空気を感じたので、配信まで待った。そして、プライム・ビデオで観たわけだが、案の定イマイチであった。

『罪人たち』あらすじ

「ブラックパンサー」「クリード チャンプを継ぐ男」のライアン・クーグラー監督が、これまでの長編作品でも数多くタッグを組んできたマイケル・B・ジョーダンを主演に迎えて描いたサバイバルスリラー。

1930年代、信仰深い人々が暮らすアメリカ南部の田舎町。双子の兄弟スモークとスタックは、かつての故郷であるこの地で一獲千金を狙い、当時禁止されていた酒や音楽を振る舞うダンスホールを開店する。オープン初日の夜、欲望が渦巻く宴に多くの客が熱狂するが、招かれざる者たちの出現により事態は一変。ダンスホールは理不尽な絶望に飲み込まれ、人知を超えた者たちの狂乱の夜が幕を開ける。

主人公の双子をジョーダンが1人2役で演じ、「バンブルビー」のヘイリー・スタインフェルド、「フェラーリ」のジャック・オコンネル、「ザ・ファイブ・ブラッズ」のデルロイ・リンドーが共演。クーグラー監督が脚本・製作も務め、スタッフにも美術デザイナーのハンナ・ビークラー、作曲家のルドウィグ・ゴランソン、衣装デザイナーのルース・ E・カーターら「ブラックパンサー」のチームが再結集した。

映画.comより引用

音楽はいいけどホラーアクション映画としては×

確かに『罪人たち』は映画館鑑賞向けの作品であろう。儀式的な音楽の高揚感、時代に反した電子ドラムとの組み合わせ、重低音のサウンドを映画館で浴びたら祭の当事者となるほどの没入感が得られるであろう。無論、本作はタランティーノ『ジャンゴ 繋がれざる者』のような黒人の痛ましき歴史に対するカウンターの要素が強く、その文脈をユニークなフィクションへと落とし込んだ功績が評価されていることもわかる。

しかし、それ以前にアクションとして、ホラーとしての表現が貧しすぎる問題が致命的となっている。高度に見せかけた舐めるようなカメラワークでアクションが展開するのだが、のっぺりとしている。棒立ちで、移動による心理戦が存在しない。アクションに生を感じない。ホラー描写は、肉体の変化から急襲までのタメの調整がよくなく、一つの技でゴリ押しているイメージがある。それは映画とはいわない。マイケル・ジャクソン「スリラー」のようにミュージックビデオと言われたら文句はないが、あくまで映画なので、映画としてホラーアクションをやってもらわないと困るのである。そのため、世間の評価に反して私は全く本作を評価することができないのである。