エレファント(2003)
Elephant
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:アレックス・フロスト、エリック・デューレン、ジョン・ロビンソン、イライアス・マッコネルetc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ガス・ヴァン・サントって間延びした時間を通じて映画の外側を捉えようとしている説を検証するために『エレファント』を観た。
『エレファント』あらすじ
99年のコロンバイン高校での銃乱射事件を、初期には「ドラッグストア・カウボーイ」や「マイ・プライベート・アイダホ」を撮っていた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・バン・サント監督が描く。撮影は「裏切り者」「ゲーム」のハリス・サヴィデス。生徒役の出演者はみな俳優ではなく実際の高校生で、セリフは彼らが即興で話すという演出。03年のカンヌ映画祭でパルムドールと監督賞を史上初のダブル受賞。
世界の終わりは間延びした時間の中、突然に
本作は長回しを通じて「日常」を捉えようとしている。ジョナサン・クレーリーは「24/7 眠らない社会」の中で、知覚できない領域としての日常を定義していた。映画はそうした日常を排除しファスト人生よろしく、切り刻んだ時間を通じてナラティブを形成する。故に映画における長回しは、何気ない状況がスペクタクルになっているかもしれないといったアテンションを観客に促し緊迫感をもたらす。
ガス・ヴァン・サントの『エレファント』は、鬱屈、アンニュイとした学校のルーティン、揺蕩うスクールカーストやイジメが存在しつつ、間延びした時間、すぐさま終末が訪れない時間を長回しで撮ることによりリアリティの強度を高めている。それは殺戮犯ですらそうで、ガレージにて銃を試射する場面はYouTube時代における「他者へ」といったベクトルは有しておらず、数年も経てば思い出のひとつに丸められてしまいそうな日常となっている。
本作が凄まじいのは、殺戮が起きる直前の演出である。FPSゲームの射殺と交差させるように実際の射殺が一人称視点で撮られる。これは実際の射殺を意味しつつ、これから射殺を行うための計画を話し合い脳内でシミュレーションしている様とも重なる。つまり、虚構/現実の宙吊りを形成しているのだ。
そして、「何か爆発した?授業なくなるかもね」とアンニュイな日々に対し破滅的なスペクタクルを冗談混じりダウナーに語り合うギャルに突然スペクタクルが訪れる皮肉をもってガス・ヴァン・サントは「日常とは何か?」といった問いに答え、事件と向き合ったのである。
※映画.comより画像引用