【YIDFF2025】『愛しき人々』刑務所の中で

愛しき人々(2023)
Malqueridas

監督:タナ・ヒルベルト

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

山形国際ドキュメンタリー映画祭で刑務所撮影映画『愛しき人々』が上映されるので観た。

『愛しき人々』概要

チリの刑務所に収監された女性たちが、撮影行為を禁じられた中で、携帯電話で密かに残した日常の光景。獄中出産した子供、離れて暮らす家族、恋人でもあり家族のようでもある収監仲間。これらのなにげない映像が消去され失われる危険に抗うため、監督はすべての映像を一度プリントアウトし再映像化する。複数の女性たちの証言と映像が混じり合い、粗い画素がインクに置き換えられたデジタルともアナログともつかない風合の画面が、女性であり、母であり、囚人でもある彼女たちの置かれた状況を親密に物語る。

山形国際ドキュメンタリー映画祭より引用

刑務所の中で

本作は刑務所で隠し撮りされた女性たちの日常を元囚人である女性のナレーションによって語られるといった作品。本作が興味深い点は、彼女たちのフッテージは何故彼女たちが収監されているのかといった理由も、チリの刑務所システムに関する批判もほとんど描かれていないところにある。静止画として収められたイメージと不鮮明な携帯電話の縦画面が観客の想像力を掻き立て、彼女たち個人の人生に向かわせる仕組みとなっているのだ。一見するとただ撮影された映像を並べているだけに思えるが、先日語った『Dry Leaf』同様携帯電話撮影のガビガビ画質による過去への眼差し、左右が狭いフレームによるフレームの外側へのアテンションを引き起こさせる演出となっており興味深かった。