『怪獣ヤロウ!』バキバキ怪獣世に憚る

怪獣ヤロウ!(2025)

監督:八木順一朗
出演:ぐんぴぃ、菅井友香、手塚とおる、三戸なつめ

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨年あたりからバキ童チャンネルをよく観る。通俗でありながら、言葉の端々に知性のある語りが癖になるのだ。本チャンネルはお笑い芸人の春とヒコーキが運用しているのだが、メンバーの土岡哲朗は、Filmarksで映画評論を書いており、切れ味のある文体と着眼点の鋭利さに魅了されている。ただ、忙しくて劇場で春とヒコーキが出演している『怪獣ヤロウ!』を観ることができなかったので配信で後追い鑑賞した。

『怪獣ヤロウ!』あらすじ

YouTubeのチャンネル登録者数168万を誇る「バキバキ童貞(バキ童)」として知られる、お笑いコンビ「春とヒコーキ」のぐんぴぃが映画初出演にして主演を務めたコメディドラマ。岐阜県関市を舞台に、ご当地映画の製作を命じられた怪獣映画好きの地方公務員が前代未聞の作戦に挑む姿を描く。

岐阜県関市役所の観光課に勤める山田一郎は何をやってもうまくいかず、毎日を淡々と過ごしていた。ある日、彼は市長から地元を盛りあげるためのご当地映画の製作を命じられる。凡庸なご当地映画を作ることに疑念を抱いた山田は、かねて夢であった怪獣映画の製作を決意するが、そんな彼の思いが、市政を巻き込んだ大事件へと発展していく。

主人公・山田とともに映画製作に取り組むヒロイン・吉田麻衣を菅井友香、観光課の先輩・武藤長介を手塚とおる、同僚・古川を三戸なつめ、伝説の怪獣映画監督・本多英二を麿赤兒、伝統を重んじる市長を清水ミチコが演じた。芸能事務所タイタンの社員で「実りゆく」など映画監督としても活動する八木順一朗が監督・脚本を担当。

映画.comより引用

バキバキ怪獣世に憚る

本作は、『カメラを止めるな!』や『侍タイムスリッパー』のようにチープさを逆手に取った作品である。独裁的な市長のアイデアで映画を撮ることになった市の職員がとあるアクシデントをきっかけに怪獣映画を作ろうとする内容。春とヒコーキのぐんぴぃ演じる男は、高校時代に怪獣映画を撮って学校で上映したものの嘲笑されたコンプレックスを持っている。それが、撮影データの消失という修羅場を前に本当に自分がやりたかったものを見出し、市民を味方につけて克服しようとする。

本作はご当地映画の胡散臭さをメタ的に取り入れている点がスパイスとなっている。最初に市長が提案する脚本は、上京して挫折した者が地元の良さに気づくプロパガンダ映画となっている。完成する映画もPR色が強いものとなっているのだが、工場の火花をエフェクトに用いるなどの工夫でもって胡散臭さを調整している点が描かれているのは興味深く観た。中途半端に2時間にせず、サクッと1時間ちょいで終わらせているのも好感が持てた。