『パルテノペ ナポリの宝石』眼差しを受容し、消えた眼差しに呪われる

パルテノペ ナポリの宝石(2024)
Parthenope

監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:セレステ・ダラ・ポルタ、ステファニア・サンドレッリ、ゲイリー・オールドマン、シルヴィオ・オルランドetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2024年のカンヌ国際映画祭は女性に対する社会の眼差しを扱った作品がコンペティション部門に集まった。セックスワーカーの人生逆転を狙う執着を扱った『ANORA アノーラ』やルッキズムに真っ向から向き合った『サブスタンス』、我々が想像するインド像から外れた女性たちに眼差しを向ける様を壁画から昔の歴史を思い浮かべる様と交差させた『私たちが光と想うすべて』がある中で、パオロ・ソレンティーノ『パルテノペ ナポリの宝石』は少し物議を醸していた記憶がある。日本公開前に観た人が「美しいけれど」と言葉を濁した短評をあげているのが散見された。実際に観てみたのだが、ソレンティーノの限界もといフェリーニ的演出が2020年代になるとミスマッチなものとなってしまっているのではと思わずにはいられなかった。

『パルテノペ ナポリの宝石』あらすじ

「グレート・ビューティー 追憶のローマ」でアカデミー外国語映画賞を受賞したイタリアの巨匠パオロ・ソレンティーノ監督が、自身の故郷である南イタリアの街ナポリを舞台に、神秘的な美しさと悲劇を背負う女性パルテノペの生涯を丹念に描いたドラマ。

1950年、風光明媚な港町ナポリで生まれた赤ん坊は、ギリシャ神話に登場する人魚の名前であり、ナポリの街を意味する「パルテノペ」と名づけられる。美しく聡明で誰からも愛されるパルテノペは、繊細な兄ライモンドと深い絆で結ばれていた。年齢と出会いを重ねるにつれ美しくなっていくパルテノペだったが、彼女が輝きを増すほど、兄の孤独があらわになっていき、やがて悲劇が起こる。

主人公パルテノペ役には、本作がスクリーンデビューとなるセレステ・ダッラ・ポルタを抜てき。年老いたパルテノペをイタリアのベテラン女優ステファニア・サンドレッリ、パルテノペと運命的な出会いを果たす作家ジョン・チーヴァーをゲイリー・オールドマンが演じた。ファッションブランド、サンローランの映画製作会社サンローランプロダクションが製作を手がけ、サンローランのクリエイティブディレクターを務めるアンソニー・バカレロが衣装のアートディレクションを担当。2024年・第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

映画.comより引用

眼差しを受容し、消えた眼差しに呪われる

「ナポリを見て死ね」とまで言われたサファイヤのように煌めく地に美しき女性が現れる。彼女を注視しない男なんぞいないとスローモーションで個/群れから眼差しを向けられる。美と知の宝石ともいえようパルテノペは兄ライモンドと親密な関係でいたが、全てを虜にする彼女を前に距離が生まれていきやがて悲劇へと繋がる。

本作はサンローランが製作にかかわっているため、ファッション広告のような優雅なショットと美しきファッションで彩られる。映画を観る者の眼差しを虜にするショットの中で、悲劇をトリガーに眼差しや好奇から逃れようとするパルテノペが描かれる。眼差しを受容した者が眼差しに呪われるのである。

もちろん、本作はルッキズムを扱った作品であり、後半には彼女の対極ともいえる存在との対話でもって問題に切り込んでいるのだが、監督自身の美への執着がこうした問題を掘り下げる以前にルッキズムに囚われてしまっている結果となった。2024年のカンヌ国際映画祭の競合とも相性も悪く、というよりか『サブスタンス』と本作を同時に競わせること自体グロテスクに思えた。
※映画.comより画像引用

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