『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』脈打つ砦の中で

トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)

監督:ソイ・チェン
出演:ルイス・クー、サモ・ハン・キンポー、リッチー・レンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2025年カルト的人気を博した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』がU-NEXTに来ていたので観た。自分にはそこまでハマらないだろうと配信まで待って観て、案の定世間程刺さったわけではないのだが、アプローチとしては興味深いものがあった。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』あらすじ

黒社会が覇権を争う九龍城砦で男たちが繰り広げる死闘を描き、香港で大ヒットを記録したアクション映画。

1980年代。香港に密入国した青年チャンは、黒社会のルールを拒んで己の道を選んだために組織から目をつけられてしまう。追い詰められた彼は運命に導かれるように、黒社会に生きる者たちの野望が渦巻く九龍城砦に逃げ込み、そこで出会った3人の仲間たちと深い友情を育んでいく。しかし九龍城砦を巻き込む抗争は激化の一途をたどり、チャンたちはそれぞれの信念を胸に命をかけた戦いに身を投じる。

「SPL 狼たちの処刑台」のルイス・クーが主演を務め、サモ・ハン、アーロン・クォック、リッチー・レンら豪華キャストが集結。「ドラゴン×マッハ!」のソイ・チェン監督がメガホンをとり、5000万香港ドル(約9億円)をかけて制作した九龍城砦のセットで撮影。「るろうに剣心」シリーズの谷垣健治がアクション監督を務め、「イップ・マン」シリーズの川井憲次が音楽を手がけた。

映画.comより引用

脈打つ砦の中で

本作は『絶壁の彼方に』をはじめめとするかつて、ハリウッドが得意としていたフィルム・ノワールを香港が刺激的なスパイスをまぶしながら再構築したような一本となっており、カイエ・デュ・シネマでも昨年の年間ベストに挙げていた選者がいたのも納得である。密入国した者が大金を奪い、敵から逃げまどう中で九龍城砦へと迷い込む。結局、金だと思っていたのがヤクだったのでどうにか売りさばこうと、迷宮のような九龍城砦を彷徨うこととなるのだが、返り討ちに遭う。その中で組織へと入り、新しい人生を歩むこととなる。ここで九龍城砦の扱いに着目したい。廃墟のような空間であり、この空間は民家や美容院、食堂がシームレスに綻びで繋がっている。ヴォイチェフ・イェジー・ハスはこのような綻びを頼りにハリボテの夢の論を詰めていったが、本作での綻びは現実のものとして描かれている。ただ、一方で時間の流れは外側と異なるように描かれており、数十年単位で時間が流れたかのような友情が内部で育まれていく。また、人間同士の複雑な関係性のメタファーとして入り組んだ構造が用いられており、対立が起こった際にその複雑に絡み合った人間関係を解く必要がある様を空間から空間へ移動し、その環境を利用して戦局に変化をもたらす演出でもって表現されている。確かにこのような手法の作劇は珍しい気がした。

※映画.comより画像引用