ドッグ・ショウ!(2000)
Best in Show
監督:クリストファー・ゲスト
出演:クリストファー・ゲスト、ユージン・レヴィ、キャサリン・オハラ、、パーカー・ポージー
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、発表され物議を醸したThe New York Timesの21世紀ベスト100記事。映画初心者向けのガイド的な役割だろうと、静観していたのだが、じっくりラインナップをみてみたらあまりにも雑で酷かった。なので、配信で最強の21世紀映画ベストを作ることにしたのだが、このリストで唯一観ていなかった作品があったので観た。
『ドッグ・ショウ!』あらすじ
全米で最も名高いドッグ・ショウメイフラワー・ドッグ・ショウが今年もペンシルベニア州で開催されることになった。イリノイ州で愛犬と共にセラピーに通っているハミルトン(マイケル・ヒッチコック)とメグ(パーカー・ポージー)の弁護士夫婦、フロリダの小心者のセールマンであるジェリー(ユージーン・レヴィー)と派手好きな妻クッキー(キャサリン・オハラ)のデコボコ夫婦、ノース・カロライナ州のフライ・フィッシング専門店のオーナーであるハーラン・ペッパー(クリストファー・ゲスト)、NYのゲイ・カップルであるスコット(ジョン・マイケル・ヒギンズ)とステファン(マイケル・マッキーン)、昨年の優勝者でボケかかっている億万長者のレスリー(パトリック・クランショー)とセクシーな若妻シェリー(ジェニファー・クーリッジ)、彼らが雇っている当代最高のハンドラーであるクリスティー(ジェイン・リンチ)など、様々な人々が一挙会場へ集まってきた。そして、全国の愛犬家たちと三千匹の愛犬たちが、コミカルな解説者バック・ラーフリン(フレッド・ウィラード)のトークに乗ってバトルを繰り広げるのだった。
人間主体への皮肉
「映画研究ユーザーズガイド:21世紀の『映画』とは何か」を読む中で、映画は複合的なメディアであり、他のメディアと比較することで「映画とは何か?」を省察してきたといったようなことが書かれていた。それはつまり、他のメディアをも規定することであり、本作は21世紀メディア論の映画として『REAL LIFE』の延長線上にある位置づけだと推察できる。テレビ番組のインタビューを模した構造でドッグコンテストを取り巻く人へと眼差しを向ける。ある意味フレデリック・ワイズマンが役割を持つ人達を捉えることで特定の領域における社会を見出すアプローチに近い。しかし、本作はそこから一歩踏み込み、社会を捉えようとする中で、その渦中にいながらも蚊帳の外に追いやられた存在が風刺として浮かび上がってくるのだ。それはまさしく「犬」である。ドッグコンテストの中心にいながらも、カメラはその周辺の人間の行動や思惑、つまらないジョークにフォーカスがあたり、申し訳程度に犬が映っているように思えるのだ。この現象は、たとえば動物系YouTuberがありのままの動物よりも撮影者の承認欲求や撮影者が切り出す世界に目が前景化し、動物というよりかは動物と飼い主との関係性が受容されがちになってしまう様を予言したかのようなものとなっている。本作は映画ではないメディアを映画として撮ることによって、人間と動物の不均衡な関係性だけではなく、メディアの中心にいながらも追いやられた存在について観客の関心を向けるのである。