『ニューヨークの王様』不条理を笑い飛ばそう

ニューヨークの王様(1957)
A King in New York

監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ドーン・アダムス、マイケル・チャップリンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。
チャップリンがアメリカを追放されて制作された作品でカイエ・デュ・シネマのベストにも選出されているのだが、意外と観ていなかったのでU-NEXTにて鑑賞した。

『ニューヨークの王様』あらすじ

喜劇王チャールズ・チャップリンが監督・脚本・製作・作曲を手がけ、彼の最後の主演作となった風刺コメディ。

自国の革命を逃れて自由の国アメリカに亡命したシャドフ国王は、出席したパーティの様子が隠しカメラでテレビ放送されたことをきっかけに、CMタレントとして人気を集める。しかし共産党員の息子ルパートと知り合ったことからシャドフ国王自身も共産党員と疑われ、思わぬ騒動に巻き込まれてしまう。

アメリカから事実上の国外追放を受けて母国イギリスへ帰ったチャップリンが、アメリカ文明への痛烈な風刺を込めて描き出す。チャップリンの息子マイケル・チャップリンが、悲劇の少年ルパートを好演。

映画.comより引用

不条理を笑い飛ばそう

改めてチャップリンはサイレント映画の巨匠だと感じる。それは空間構図を観れば明らかだ。革命が発生し、群衆が屋敷へと雪崩れ込む。広い空間に群衆全体を収めるのではなく、少し進めて撤退させる。ロングショットでもぬけの殻となった金庫フロアを魅せる奥行きの与え方に圧倒される。こういった人物の動かし方は滅多に観られるものではない。

アメリカへ亡命した王は、カフカの小説のように不条理に満ちたアメリカを彷徨う。劇場へ足を運べば、女性たちが狂乱となり、彼の足を食べようとする。レストランではバンドがうるさくて全くもって言葉が通じない。亡命に成功したとて人生は上手くいかない様が風刺として描かれているのである。チャップリンの身体表象は漫画のようにコミカルなものとなっているので、イメージで物語を語っている印象があり、改めて映画の王なんだなと感じた。

※映画.comより画像引用