S21 クメール・ルージュの虐殺者たち(2002)
S21: THE KHMER ROUGE DEATH MACHINE
監督:リティ・パン
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、第47回世界遺産委員会でカンボジアの記憶の場が世界遺産に登録された。クメール・ルージュの虐殺の記憶を顕著な普遍的価値を有するものとして人類全体で保護していく目的がある。その構成遺産に、S21 (トゥール・スレン)が含まれていたので、ここを舞台にしたドキュメンタリーを観た。
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』概要
かつての政治犯収容所「S21」。クメール・ルージュの大虐殺による加害者と被害者をその場所に集め、非人間的で過酷な日々を再現していく。証言で明らかになる真実の数々、対峙する2人のやりとりの迫真性が25年という時を越える。カンボジア生まれである監督の、故国への想いが静かに脈打つ。
※YIDFFより引用
カンボジアの記憶の場が世界遺産になったので
S21へ足を運ぶ。そこには痛ましき過去が凝縮されており、虐殺被害者の写真や虐殺に関する文献がある。そして、当事者により再構築された絵もある。ありのままを捉える写真と記憶の外部化としての絵が交差する。現実/虚構、双方を繋ぐメディアとしてリティ・パンは加害者に当時のことを再現してもらう。牢屋に、犬用の皿のようなものを入り圧をかけながら与える。そこには加害者の声しかないのだが、我々は被害者の悲痛の叫びを感じ取ることができる。
本作の手法は『アクト・オブ・キリング』と同様の手法が取られているのだが、こちらは非常に露悪的な手法となっていたのに対し、『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』では繊細に過度な演出にならないよう再現を行う。そして目線を合わせないようなショットで加害者と被害者を同じ空間に捉え過去と向き合わせるのである。
さらに、廃墟というかつて人の活動があった場所に対し多層的なメディアを介することで今へと歴史を繋げようとする営みがここにあった。