『時間の闇の中で』人の手から離れた時間を求めて

時間の闇の中で(2002)
Dans le noir du temps

監督:ジャン=リュック・ゴダール

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

新宿歌舞伎町・王城ビルにて開催されているジャン=リュック・ゴダール《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展の予習で『イメージの本』を再観したのだが、黒い存在に白い人を横たわらせたイメージに惹き込まれた。双方が背景となりゆる構造、人間の肉体の境界線が曖昧な様に魅了された。そのソースがゴダールの短編映画『時間の闇の中で』だと判明し、観たのだが10分でここまで強固な時間論を語れるのかと畏敬の念を抱いた。

『時間の闇の中で』あらすじ

“In the Darkness of Time”, filmed by the ideologue of the French “New Wave” Jean-Luc Godard, represents an essence of visual reflection of the Time.
訳:フランスのヌーヴェルヴァーグの思想家ジャン=リュック・ゴダールが撮影した「In the Darkness of Time」は、時代の視覚的反映の真髄を表現しています。

IMDbより引用

人の手から離れた時間を求めて

本作は「人の手を離れる運動」を中心に時間の芸術である映画の役割を考察しているように思える。ナチスの写真と思われるイメージを提示し、銃声を被せる。フィクションにおける銃と現実における砲撃を重ねていき、暴力をもたらす存在を捉えていく。そして場面は現代へ移る。ゴミを捨てる一般的な光景でありながら、投げ捨てられるゴミ袋の音は過剰に協調され、爆撃を連想させる。次にゴミ袋に本を投げ入れるのだが、そこへ本が燃えるような音が挿入される。時間が凝縮された構造体である本が人の手を離れる。そして、乱暴に捨てられる暴力的なショットは、戦争におけるトリガーが引かれ、人の手から離れた物体が他者の命を奪う暴力へと繋がる。過去/現在に流れる暴力的な各ションを焚書を連想させる音を接着剤とし繋ぎ合わせるのである。映画は異なる時間の流れを繋ぎ、ある考えを浮かび上がらせる。その機能は、忘却された加害の歴史にスポットライトを当て反省と平和を促す運動へ導くことができるのではといったゴダールの思想を汲み取ることができた。

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