『EUREKA ユリイカ』事件を抜いたら『PERFECT DAYS』説

EUREKA ユリイカ(2000)

監督:青山真治
出演:役所広司、宮﨑あおい、宮崎将、斉藤陽一郎etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

中学生ぶりに『EUREKA ユリイカ』を観た。青山真治の作品はかなり苦手ではあるのだが、これは良かった。

『EUREKA ユリイカ』あらすじ

「Helpless」の青山真治監督が、バスジャック事件で心に傷を負った人々の再生への旅を描いた人間ドラマ。2000年・第53回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞した。九州の地方都市でバスジャック事件が発生し、多くの乗客が殺害された。生き残ったのは運転手の沢井と、中学生の直樹と小学生の梢の兄妹だけで、3人は心に深い傷を負う。2年後、家族を置いて消息を絶っていた沢井が町に戻ってくる。時を同じくして周辺で連続殺人事件が発生し、沢井に疑いの目が向けられる。そんな中、兄妹が2人だけで暮らしていることを知った沢井は、彼らの自宅を訪ね一緒に暮らし始める。さらに兄妹の従兄・秋彦も加わり、4人は沢井の運転するバスで旅に出るが……。沢井を役所広司、直樹と梢を実際の兄妹である宮崎将と宮崎あおいが演じた。2022年3月に青山真治監督が他界したことを受け、同年5月に追悼上映としてデジタル・マスター完全版を劇場公開。

映画.comより引用

事件を抜いたら『PERFECT DAYS』説

バスに男が乗り込む。中途半端な位置で立ち尽くし「あっ!」と後ろの客に気づいたかと思えば、運転席の横に立ち虚空を見つめる。事件の香り漂わせる予兆は現実となり、バスから逃げる者は彼によって射殺される。警察は万全の態勢でバスを取り囲み、刹那を狙い彼を銃撃する。対話不可能な人間のように思えぬ彼は、そう簡単に死ぬことなく、しぶとく発砲しようとするなか、子どもは助かる。たった15分、セリフも少ないながら緊張感に満ちた地獄のような心理戦の末、映画は長い時間かけてトラウマを浄化していく。

青山真治は、トラウマと対峙し折り合いをつけるまでにかかる果てしなく長い轍を3つのギミックで表象していく。ひとつめは、家の存在である。兄妹は事件のトラウマによって家に引き篭もる。そこに、従兄弟がやってきて明るくケアする。役所広司演じるバスの運転手も加わり、擬似家族的なコミュニティが形成されるのだが、止まったような時間は外との繋がりも少なく息苦しいものとなる。だからこそ、2つ目のギミックとして旧式バスによる移動がある。その場に留まっても仕方がないから前へ進むしかないのだ。ある種現実逃避のようにも思える移動に3つ目のギミックである咳が絡んでくる。バスの運転手は終始、咳き込んでいる。どんなに移動しようとも、咳は嘘をつかない。自分と対峙させるのだ。それは過去と向き合うことであり、未来を向いているバスの移動と過去に囚われた家、それらを繋ぐ咳の存在によってトラウマの構造を紐解いていくのだ。

余談だが、本作の役所広司の挙動が『PERFECT DAYS』過ぎて、『PERFECT DAYS』は本作の続編なのではと思った。
※映画.comより画像引用

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