【ラウラ・シタレラ特集】『オステンデ』匿名的他者は霞んだ世界には入れない

オステンデ(2011)
Ostende

監督:ラウラ・シタレラ
出演:ラウラ・パレーデス、フリアン・テジョ、サンティアゴ・ゴベルノリ、デボラ・デフティアル、フェルナンダ・アラルコン、フリオ・シタレラetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ユーロスペースにて開催中のラウラ・シタレラ特集で『オステンデ』を観た。ヒッチコック『裏窓』みたいな話だと聞いていたが、露骨過ぎて笑うも観点はめちゃくちゃ面白かった。

『オステンデ』あらすじ

4時間を超えるミステリー長編「トレンケ・ラウケン」がフランスのカイエ・デュ・シネマ誌で2023年の年間ベストテン第1位に選ばれるなど、国際的にも注目の高まるアルゼンチンの女性監督ラウラ・シタレラが、2011年に発表したデビュー作。日常に潜むフィクションにのめり込む女性を描いた。

ラジオのクイズコンテストの懸賞で、ブエノスアイレス近郊オステンデのホテルに宿泊することになったラウラ。リゾートはシーズンオフで、後から合流する彼氏を待つ間、彼女は2人の若い女を連れてホテルに滞在する中年男を観察しはじめる。男の奇妙な態度に好奇心をくすぐられ、ひそかに繰り広げられているかもしれない男をめぐる物語を解き明かそうと想像をふくらませてゆくラウラだったが……。

「トレンケ・ラウケン」の劇場公開にあわせた特集上映「ラウラ・シタレラ監督特集 響きあう秘密」にて日本劇場初公開。

※映画.comより引用

匿名的他者は霞んだ世界には入れない

相方より先にバカンス地へ着いた女。アンニュイな面持ちの彼女は何気なく外を覗き、プールにいる怪しげなおじが気になり、観察を始める。一方で、食堂のにいちゃんが彼女にダル絡みを始める。

旅行とは自分の生活がある場所のしがらみから解放され匿名的他者となる。観察の眼差しは我々が映画を観るのと同様に覗き見的役割を果たす。しかし、社会は完全に旅行者を匿名的他者にしようとはせずに対話を求めて来る。そこで生じる見る/見られるの関係を軸にしつつ、結局匿名的他者の眼差しは対象の領域へアクセスすることはできないと語る。

この表象が面白い。ボヤけた空間にくっきり主人公を捉え、ボヤけた世界へ入門させる。しかし、その空間を彷徨う中でおじはくっきりした世界へするりと抜けてしまう。さらに追うも、相方から電話がかかり、その対応をする中で消えてしまうのだ。

それにしても、旅行あるあると言える話したがる人ほど話がつまらない問題の解像度がやたらと高く、主人公のペットボトルの水の減り方が早くて笑った。
※映画.comより画像引用