【ウカマウ集団】『コンドルの血』+『落盤』本来の意味で使われる《ヤンキー》

コンドルの血(1969)
Sangre de cóndor

監督:ホルヘ・サンヒネス
出演:マルセリーノ・ヤナウアヤ

評価:60点

K’s cinemaにて開催中のウカマウ集団60年の全軌跡にて『コンドルの血』と『落盤』を観た。

『コンドルの血』あらすじ

南米ボリビアでアンデス先住民の現実を描き続ける映画制作集団「ウカマウ」が1969年に手がけた長編第2作。アメリカの政府援助組織「平和部隊」が先住民女性に対して強制的に行なっていた不妊化手術の実態を暴き、平和部隊が撤退する一因をつくった。アンデスのとある寒村。1年ほど前から村に子どもが誕生していないことに不審を抱いた村長イグナシオは、女性たちに対して聞きこみ調査を開始する。女性たちの不妊は、医療チームを名乗って村にやってきたアメリカ人たちの仕業だと確信したイグナシオは、村人たちを動員して彼らを告発・非難するが……。

映画.comより引用

本来の意味で使われる《ヤンキー》

本作はアンデスの村にやってきた胡散臭い医療チームとの軋轢を描いた作品である。ウカマウ集団の作品はゴダールに影響を与えたことで知られているが、確かに銃撃を受ける場面の鋭いショットは『カラビニエ』を撮ったゴダールに刺さりそうだなと思う。

全体的にとっ散らかった内容かつ催眠的で厳しいものを感じるのだが、要所要所に興味深いものがある。まず、何と言っても本来の意味で《ヤンキー》という言葉が使われている点にある。日本では不良のことをヤンキーと言うが、本来はアメリカ人に対する蔑称である。”Born to Be Wild”を背に踊り狂い、村人たちの卵も「あたいらが買い占めるよ」と圧をかける傲慢なよそ者。それに対する抵抗のドラマとして、牧歌的な空気から一気に革命の色へと変わっていく。こういうところは観て良かったと思う。

併せて観た短編『落盤』もレビューする。ボリビアは鉱山で有名な場所であり、アマルガム法を取り入れ銀や錫を算出し、17世紀頃には世界の銀産出量の半分を生み出していたポトシが世界遺産となっている。

佐渡金山もそうだが、この手の鉱山は奴隷を使った過酷な労働環境や危険な採掘により死者が絶えない。『落盤』はそのような痛ましき鉱山での労働をサイレント映画に近い手法で描いている。セリフは限りなく減らし、ショットによる緊迫感で持って富を手にするか死ぬかの瀬戸際を描いているのである。