小さな心に祝福を(1984)
Bless Their Little Hearts
監督:ビリー・ウッドベリー
出演:ネイト・ハードマン、ケイシー・ムーア、アンジェラ・バーネット、ロナルド・バーネット、キンバリー・バーネット
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2025年は世界が終わるのかと思うほど、凄まじい旧作映画特集の洪水となっている。余命僅かな人が人生を駆け抜けているかのような怒涛の1年となっているわけだが、ヒューマントラストシネマではアメリカ黒人映画傑作選という渋すぎる催しが行われている。イメージフォーラムでもBunkamura ル・シネマでもなくヒューマントラストシネマ渋谷まで切り札を持ってきている異常事態だ。全然知らないラインナップだったので興味を抱き行ってきた。まずは『小さな心に祝福を』を観た。
『小さな心に祝福を』あらすじ
ロサンゼルスの貧困地区を舞台に、黒人家族の過酷な日常をモノクロ映像で丹念につづったドラマ。
ロサンゼルスのワッツ地区で、妻や3人の幼い子どもたちと暮らすチャーリー。失業中の彼は職探しの日々を送っているが、日雇いの仕事にありつければまだマシな方で、思うように金を稼ぐ手立てがみつからない。妻アンダイスはそんな夫の不甲斐なさに諦めの表情を浮かべ、家計のやりくりに苦心しながら家事に追われストレスを募らせていた。ある日、チャーリーの浮気が発覚し、アンダイスはついに怒りを爆発させる。
監督は、新しい黒人映画を模索したインディペンデント映画監督グループ「L.A.リベリオン」のメンバーであるビリー・ウッドベリー。同グループの一員で、2017年にアカデミー名誉賞を受賞した名監督チャールズ・バーネットが脚本と撮影を手がけた。日本では2025年4月より開催の特集上映「アメリカ黒人映画傑作選」にて劇場初公開。
努力する時は終わった
黒人が役所で書類を書く。求人に応募しているようだ。トボトボと家路に着く。家では子供たちが狭い部屋の中で時間を潰している。大黒柱として稼がなければならないのだが、失業中であり、日雇いの仕事で日銭を稼いでいるのである。日によっては仕事にありつけないこともあり、ぶらぶら外を彷徨って帰宅。子どもたちの前では立派なお父さんであろうとするも、妻には全て見抜かれてしまっている。
黒人社会版『トウキョウソナタ』といった趣の作品であり、黒人問題というよりかは失業時のヒリついた空気と間延びした時間を前面にした作品となっている。妻が「努力する時は終わったのよ。もうやるしかないのよ。」と叫んだことがきっかけで、川でナマズやらカニやらを獲って、仲間と必死に通りを走る車に向かって営業する。この哀愁が実に辛辣であった。