『光る川』時空を遡上する

光る川(2024)

監督:金子雅和
出演:華村あすか、葵揚、有⼭実俊、足立智充、山田キヌヲ、髙橋雄祐、松岡龍平etc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

リング・ワンダリング』で美しく丁寧な時空間描写を魅せた金子雅和新作『光る川』がユーロスペースで公開されていたので観てきた。前作からパワーアップした時空間描写に圧倒されたのであった。

『光る川』あらすじ

「アルビノの木」「リング・ワンダリング」で国内外から注目を集めた金子雅和監督が、松田悠八の小説「長良川 スタンドバイミー一九五〇」を原作に、岐阜県長良川流域の土地・民話・伝承からインスピレーションを受けて撮りあげた長編第3作。

日本が高度経済成長期に突入したばかりの1958年。少年ユウチャは大きな川の上流に位置する山間の集落で、林業に従事する父と病床の母、老いた祖母と暮らしている。まだ自然豊かな土地ではあるが、森林伐採の影響もあるのか、家族は年々深刻化する台風による洪水に脅かされている。ある日、集落に紙芝居屋の男が現れ、集まった子どもたちを前に、古くから土地に伝わる里の娘・お葉と山の民である木地屋の青年・朔の悲恋の物語を披露する。かなわぬ思いに絶望したお葉は山奥の淵に入水し、それから数十年に一度の割合で洪水が起きるようになったという。物語と現実の奇妙な符合を感じたユウチャは、お葉の魂を解放して洪水を防ごうと山奥の淵へ向かう。

Netflix映画「シティーハンター」の華村あすかがお葉、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の葵揚が朔、子役の有山実俊がユウチャとお葉の弟・枝郎を1人2役で演じた。

映画.comより引用

時空を遡上する

松田悠八「長良川 スタンドバイミー一九五〇」を基とする本作は、日本が高度経済成長期に突入する1958年を舞台に、都市による影響で厄災を被る村の姿を美しくも哀愁あるタッチで描いていく。テイストは神山征二郎『ふるさと』に近いだろう。

少年は紙芝居屋から興味深い話を聞かされる。それはこの村に眠る「ロミオとジュリエット」たる恋愛譚である。お椀職人木地屋の青年が里の女に恋をするも、「付き合うなら技術を置いてされ。その手を切り落とすのだ。」と親方に脅され苦悩する。

話を聞いた少年が川へ行くと、お椀がドンブラコドンブラこと流れていることに気づき持ち帰る。おばばは、それは呪いだと語り、お椀を戻さねば厄災が降りかかると叫ぶ。正義感の強い少年は、父親を振り払い、ひとり川を遡上していく。

紙芝居を通じた点の過去に対し、時間を逆行するが如く川を遡上し、現在と過去を線として繋ぐ。マジックリアリズムのように、過去の物語に少年が介入し、訪れるであろう厄災の未来を改変していくアプローチが、等身大の自然描写と共に編み込まれる。

水の音は癒しの役割をもたらす一方で、大雨となれば怖さを引き立てる。癒しと怖さの宙吊りの中で少年が過去に触れていく様が美しく面白い一本であった。
※映画.comより画像引用

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