パーティーガール 4Kレストア(1995)
PARTY GIRL
監督:デイジー・フォン・シャーラー・メイヤー
出演:パーカー・ポージー、オマール・タウンゼント、ギレルモ・ディアス、アンソニー・デサンドetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『ストレンジ・リトル・キャット』『ベイト(餌)』『ストロベリー・マンション』など、ユニークな作品を発掘し紹介する団体Gucchi’s Free Schoolの新しい企画が立ち上がった。今回は英文学者である北村紗衣の「女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選」を発売を記念して2本の作品が上映される。1本目が『パーティーガール 4Kレストア』(4/26(土)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて一夜限りの限定上映)、もう一本が『タイムズ・スクエア』(7/11(金)よりシネマート新宿、Strangerにて公開)である。今回、試写にて『パーティーガール 4Kレストア』を観させていただいたのでレビューしていく。
『パーティーガール 4Kレストア』あらすじ
A 20-something, irresponsible party girl is bailed out of jail by her librarian godmother. To repay the loan, she starts working at the library and gradually turns her life around.
訳:20 代の無責任なパーティガールが、司書の名付け親によって保釈される。借金を返済するために、彼女は図書館で働き始め、徐々に人生を立て直していく。
ギャルが階段を上る時
パーティに明け暮れるメアリーは金欠ではあるが、ウェイトレスなどの接客業はしたくないと考えている。なんなら働かずにずっとパーティの高揚感に包まれたい心持ちだ。しかし、そんな彼女を名付け親のジュディは許さない。図書館司書として働くジュディは、メアリーを図書館で働かせることにする。古臭い図書分類法なんて覚えて何になるの?ダサいし?退屈だと思うメアリーだったが渋々働くこととなる。
本作はアンニュイなギャルの心理をリアルに描写している。たとえば、彼女が図書館のスタンプを押したり用紙を仕舞う運動に音楽性を見出し、業務自体は上の空となる場面は、我々も退屈な仕事をする時に思い当たるであろう。時間の経過を待つかのように、目の前の事象を自分の趣味に近づけ空想する。また、生物学の本の表紙から猿が語り掛けて来るような妄想シーンもあり、仕事に集中できず時間経過を待つかのようにノイズが入ってくる様がまさしく仕事に退屈さを抱く者の心理を体現している。
そんな彼女と対比するようにジュディは厳しく仕事をしている。その理由が映画の中で語られる。「知性と複雑性を示すために女性は奮闘している」と激怒する場面があるのだ。女性は社会から見下される傾向がある。事務職なんて誰でもできるでしょと賃金も低くされる。それに抵抗するために厳しく仕事をするのである。これは日本の会社でもあるだろう。めちゃくちゃあたりの強い女性社員と間抜けなおっさん社員がバチバチにやり合う様子はよく見かける。では、なぜ女性社員はあそこまで厳しいのか。まさしくジュディが語る通りなんだろう。男性からは見えてこない視点を明確に提示してくるのが『パーティーガール』なのである。
そして、映画の終盤である作品が浮かび上がる。それは成瀬巳喜男『女が階段を上る時』だ。銀座のバーで働く女の日常を描いた作品。よくDVDジャケットやメインビジュアルにもなっている高峰秀子が階段を上る場面。これは、これから「バーの女」としての仮面を被るところを表現している。領域に入れば、その領域に適した役割を演じる。バーでの生活も息苦しく退屈ではあるが、バーの外側も退屈さが広がっている。この構図は『パーティーガール』にもいえるであろう。現実逃避としてパーティや服がたくさんある空間に逃げ込む。一方、図書館では事務員としての退屈な振る舞いをしないといけない。では、街中ではどうなのか?ファラフェル売りのボーイとは話すものの全体的に時間がゆっくりとしたアンニュイさが漂っているのである。後半の場面で『女が階段を上る時』に近い急勾配な階段を提示していることから、デイジー・フォン・シャーラー・メイヤー監督はかなり意識しているといえよう。
4/26(土)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて一夜限りの限定上映ではあるが、あまり観たことのないタイプの作品なので要チェックである。
※Gucchi’s Free Schoolより画像提供