『My Undesirable Friends:PartⅠ』それでも私はジャーナリズムを信じる

My Undesirable Friends:PartⅠ(2024)

監督:Julia Loktev

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

FILM COMMENT誌の未配給ベスト2024にて選出された5時間半にも及ぶドキュメンタリー『My Undesirable Friends:PartⅠ』を観た。本作はロシアの報道機関TV Rainで活動する女性ジャーナリストたちを追った内容である。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の少し前から撮影が始まり、日に日に悪化していくロシアの報道規制に対し立ち向かう者を5つのパートに分けて描いている。今年、後編が公開される予定ではあるが、映画を観るとわかる通り、完成も危うい作品であり、本作が多くの目に留まることが重要となってくる。映画の形態上、日本で公開されるイメージが湧きにくい作品ではあるが、人柱として紹介していく。

『My Undesirable Friends:PartⅠ』概要

Julia Loktev documents independent journalists in Moscow facing government crackdown as Russia invades Ukraine, capturing their fight for speech amid risks of being branded “foreign agents” and the country’s drift towards authoritarianism.
訳:ジュリア・ロクテフは、ロシアがウクライナに侵攻する中、政府の弾圧に直面するモスクワの独立系ジャーナリストを記録し、「外国のエージェント」とレッテルを貼られる危険と、国が権威主義へと傾く中での言論闘争を記録している。

IMDbより引用

それでも私はジャーナリズムを信じる

ロシアでの報道規制は想像を絶するものがある。政府から「望ましくない組織」とレッテルが貼られると、対象の報道機関が発表する記事をSNSで拡散したり、インタビューを受けるだけで犯罪となる。報道は事件を世に伝え、拡散されることが重要であるにもかかわらず、それが封殺されてしまうのだ。実際にチェチェンで発生したゲイに対する暴行に対する報道も厳しく取り締まられている。

映画はiPhoneで撮影されており、女性ジャーナリストたちの生活を間近で捉えている。ロシアのウクライナ侵攻により戦争が勃発しているが、一見すると画に映し出される光景はどこか平和に見える。しかし、少しでも気を抜けば、警察に逮捕されたり、襲撃に遭うのである。

その痛ましさは、時にテロップで冷酷につづられる。「アーニャは帰ってこなかった」「活動家をテロリストとして非合法化した」といったように。実際に、ジャーナリストの何人かは国外脱出していることがわかる。

それでもカメラを前に「私はジャーナリズムが好きなんだ」と語る女性がいる。それは本心であると共に、ロシア政府による弾圧によって心が折れてしまわないよう自分に言い聞かせているように思えて泣けてくるのだ。

The Hollywood Reporterの記事を読むと、ドナルド・トランプ新政権になって、徹底的に多様性を滅ぼそうとする様と本作のロシア情勢を重ね合わせている。アメリカの暗い未来を本作から見つめているようだ。これは、日本も他人事ではないだろう。だからこそ、この映画はなんらかの形で日本でも観られるべきなのである。