『My Winnipeg』映画を撮って、ウィニペグから脱出するぞ

My Winnipeg(2007)

監督:ガイ・マディン
出演:アン・サヴェージ、Louis Negin、エイミー・スチュワート、ダルシー・フェール、ブレット・ドナヒューetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2024年末にマシュー・ランキン『ユニバーサル・ランゲージ』を観直したところ、明らかにガイ・マディン『My Winnipeg』のリメイク的関係性であることに気づいた。クライテリオンのブルーレイを入手して観直したのだが、以前よりも面白い作品のように思えた。

『My Winnipeg』あらすじ

Fact, fantasy and memory are woven seamlessly together in this portrait of film-maker Guy Maddin’s home town of Winnipeg, Manitoba.
訳:映画監督ガイ・マディンの故郷であるマニトバ州ウィニペグを描いたこの作品では、事実、空想、記憶がシームレスに織り合わされています。

IMDbより引用

映画を撮って、ウィニペグから脱出するぞ

マシュー・ランキン『ユニバーサル・ランゲージ』では「ウィニペグは観光地じゃない」と虚無を抱きながら帰郷するマシュー・ランキンが自分史を通じて土地と対峙する物語となっていた。同様に本作も、電車でウィニペグに向かうガイ・マディンが微睡みながら映画の構想と土地の歴史、そして自分の歴史を虚実曖昧な形で連想していく内容となっている。骨格は全く一緒なのだが、『ユニバーサル・ランゲージ』はペルシャ語圏となったウィニペグの街を現実として捉えながら話を進行させるのに対し、本作は夢をベースとして物語っている点が興味深い。ガイ・マディンは嘘をキュレーションする中で自分の本質にたどり着けるといった思想を持っており、映画における夢の側面に執着しているため夢の中に実際のホッケースタジアム爆破の事実を挿入するアプローチを取っている。彼はもはや意識レベルでホッケーが重要な要素らしい。それにしても、ガイ・マディンのエッセイなどを読むとウィニペグ出身の監督が揃って、「ウィニペグには何もない」と語りながらその虚無かに惹きこまれて変わった映画を作っているのが興味深い。あの街には何があるんだ?ツイン・ピークスみたいな街なのかと思わずにはいられない。2025年はガイ・マディン特集があり『ユニバーサル・ランゲージ』が公開されるので、是非とも『My Winnipeg』も紹介されてほしい。