『Bird』居場所がない私は流浪の鳥を助ける

Bird(2024)

監督:アンドレア・アーノルド
出演:バリー・コーガン、フランツ・ロゴフスキ、ジェームス・ネルソン・ジョイス、ジャスミン・ジョブソン、リース・イエーツetc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『フィッシュ・タンク』や『アメリカン・ハニー』など、居場所のない者が居場所を探そうとする話を撮り続けて来たアンドレア・アーノルド監督。彼女の新作はその集大成でありながら、今までにないアプローチを模索する一本となっていた。

『Bird』あらすじ

Bailey lives with her brother Hunter and her father Bug, who raises them alone in a squat in northern Kent. Bug doesn’t have much time to devote to them. Bailey looks for attention and adventure elsewhere.
訳:ベイリーは兄のハンターと父のバグと一緒に暮らしており、バグはケント北部の空き家で二人を育てています。バグには二人に割ける時間があまりありません。ベイリーは他の場所で注目と冒険を求めています。

IMDbより引用

居場所がない私は流浪の鳥を助ける

廃墟のようなところで暮らすベイリーには居場所がない。別に家族と仲が悪いわけではないのだが、兄ハンターも父バグも自分の領域で暮らしている感じがして、どこか居心地が悪い。そんな居心地の悪さを壁に投影したスマホの画面のような映像で表現する。家族なのにフィルターの内と外で分断されているようなのだ。

そんな彼女は、原っぱでどこか気持ち悪い存在と出会う。そいつは「鳥」と自称し彷徨っているのだ。自分の居場所のない彼女は居場所を探し彷徨う鳥を助ける冒険に出る。何かが変わると信じて。

映画業界は未だにスマホの縦画面を、汚いクローズアップで使うぐらいしかできていない訳だが、本作では視野の狭さは群から疎外された手触り、感傷的、夢を表現するために効果的に使われている。マジックリアリズムの手法として壁に投影された縦画面が機能しているのだ。

また、終盤には従来のアンドレア・アーノルド映画にはなかったサプライズまで用意されている。しかしながら、そのサプライズを踏まえると「鳥」は寡黙であるべきだと思った。言葉ではなく、身体を通じた対話でもって、自分の中にあるモヤモヤが癒されていく話に落とし込んでいれば傑作であっただろう。本作は饒舌すぎたのである。