【第37回東京国際映画祭】『彼のイメージ』それは誰のイメージだい?

彼のイメージ(2024)
原題:À son image
英題:In His Own Image

監督:ティエリー・デ・ペレッティ
出演:クララ=マリア・ラレド、マルク・アントヌ・モッツィコナッチ、ルイ・スタラースetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第37回東京国際映画祭コンペティション作品を観た。

『彼のイメージ』あらすじ

映画は、コルシカ島の地方紙で働く写真家のアントニアが交通事故で死亡し、その葬儀のために家族や友人たちが集まる場面から始まる。そして、アントニアが18歳だった1980年に遡り、そこからの20年あまりの彼女の人生が描かれる。写真を撮るのが好きなアントニアは、コルシカ独立運動に身を投じているパスカルと恋愛関係になり、同じように政治活動を行っている若者たちと知り合う。やがて、彼らが所属する「コルシカ民族解放戦線」の活動は過激化し、パスカルは投獄と釈放を繰り返すようになる…。ジェローム・フェラーリの小説に基づき、個人のエピソードをモザイク状に構成し、その背景にコルシカの社会状況のうねりを描く構成が見事。

※第37回東京国際映画祭より引用

それは誰のイメージだい?

本作はコルシカ民族解放戦線を追う女性ジャーナリストの思わぬ死をトリガーに恋人目線から彼女の活動を追う内容である。

実は『スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989』『シビル・ウォー』と共鳴するものがあり、退屈な作品でありながら興味深い要素を持っている。

前者を重ねると「メディアはどう事象を語ったか?」に力点を置いている。主人公はスペクタクル的な画により表層的な語りとなってしまい陳腐な自己が形成されることを回避しようと葛藤しながら取材、編集、レビューの工程をこなす。写真の背景に特化した作りとなっているのだ。

そこで『シビル・ウォー』が対岸の映画として光る。『シビル・ウォー』は戦場カメラマンに必要な意図的に思考停止させる瞬間を捉えるため、スペクタクル全振りな作品となっている。一方、こちらではコルシカ民族解放戦線の過激で凄惨な殺戮の事実があるにもかかわらず、その凄惨さはスペクタクルとして映画に取り込まないよう抑えている。カフェで銃殺され、血溜まりができている場所を撮影する場面ではロングショットで彼女を収め、カメラを向けることにより死角付近にいる死体の存在に気づかされるものとなっている。

しかしながら、タイトルが『彼のイメージ』となっているものの、目線が散漫となっており、「これは誰目線の話なのか?」と疑問になる場面が多発していて、丁寧なようで随分と雑な映画に感じた。