『TOXIC』いじめっ子/いじめられっ子、第三の場所を探す

TOXIC(2024)

監督:サウレ・ブリウバイト
出演:イーグル・ガブレナイト、ベスタ・マトゥライト、イエヴァ・ルペイカイテ、ギエドリウス・サビカスetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、行われたロカルノ国際映画祭で最高賞にあたる金豹賞を受賞したリトアニア映画『TOXIC』を観た。サウレ・ブリウバイト初長編監督作ながら、今後注目の兆し感じさせるものがあった。

『TOXIC』あらすじ

ÖzetBliuvaitė’s feature debut takes on the world of modelling – and the pain of coming-of-age – as its teenage protagonist gets ready for casting that could change everything, not to mention help her finally leave her home.
訳:サウレ・ブリウバイトの長編デビュー作は、モデルの世界と青春の苦悩に挑んでいる。10代の主人公が、すべてを変えるかもしれないキャスティングの準備を進め、最終的に家を出る手助けをするのは言うまでもない。

MUBIより引用

いじめっ子/いじめられっ子、第三の場所を探す

本作は閉塞感者でありながら適切に画の質感を切り替えていく作品である。プールの更衣室から物語は始まる。少し上の角度から横移動しながらマリアを捉える。どうやら服が隠されてしまったようだ。そしてクリスティナと喧嘩をする。マリアは背が高く、足を引きずっているためいじめの標的にされてしまうのだ。そして、マリアが深淵を覗き込むようにロッカーが伸びていくのを引きで撮る。極めて映画的ショットから本作は始まるのだが、オープニングが終わるとホームビデオのようなタッチとなり、どんよりとした空気感流れる日常が映し出される。いじめというのはある種スペクタクル的であるが、現実はどんよりとした間延びした空間の中にあることを観客に強調しているといえる。映画はクリスティナのパートへと移る。彼女はどうやら家に居場所がないことが分かる。そして二人は相いれないはずなのに第三の場所を求めて絆が生まれる。その場所とはモデル学校であり、現実逃避の場所としてどこか異様な空気感を漂わせている。正直、内容だけならあまり面白いとはいえないのだが、演出面で丁寧でありサウレ・ブリウバイトの今後に期待が高まった。