『コット、はじまりの夏』西の魔女と戯れてみた

コット、はじまりの夏(2022)
The Quiet Girl

監督:コルム・バレード
出演:キャリー・クロウリー、アンドリュー・ベネット、キャサリン・クリンチetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

映画呑み部の議題に選ばれていたので急遽観に行った。想像と全く異なる作品で度肝を抜かれると共に、あまりの心地よさにウトウトしてしまった。それでも素晴らしい作品なので軽く語っていく。

『コット、はじまりの夏』あらすじ

1980年代初頭のアイルランドを舞台に、9歳の少女が過ごす特別な夏休みを描いたヒューマンドラマ。第72回ベルリン国際映画祭で子どもが主役の映画を対象にした国際ジェネレーション部門でグランプリを受賞し、第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートもされた。

1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中でひとり静かに暮らす寡黙な少女コットは、夏休みを親戚夫婦キンセラ家の緑豊かな農場で過ごすことに。はじめのうちは慣れない生活に戸惑うコットだったが、ショーンとアイリンの夫婦の愛情をたっぷりと受け、ひとつひとつの生活を丁寧に過ごす中で、これまで経験したことのなかった生きる喜びを実感していく。

本作がデビュー作となるキャサリン・クリンチが主人公コットを圧倒的な透明感と存在感で繊細に演じ、IFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を史上最年少の12歳で受賞。アイルランドの作家クレア・キーガンの小説「Foster」を原作に、これまでドキュメンタリー作品を中心に子どもの視点や家族の絆を描いてきたコルム・バレードが長編劇映画初監督・脚本を手がけた。

映画.comより引用

西の魔女と戯れてみた

ベルリン国際映画祭で国際ジェネレーション部門でグランプリを受賞し、アカデミー賞の国際長編映画賞にもノミネートされているので子どもを題材にした重い話なのかと思っていたら、児童小説のような、まさしく「西の魔女が死んだ」を彷彿させる内容で驚かされる。そう聞くとライトに思えるかもしれないが、映像はバキバキにキマッており、時間操作による回想が独特な空気感を生み出していく。そして心地よい音が厳格なショットに快楽を与えていく。例えば、暗闇から外を捉える場面では、陰影を用いて、三角と長方形の構図を生み出し、そこをさらに緑で分断する。滅多に観られない空間から、コットのアンニュイな気持ちを抽出しようとしている。これがとても良かったりする。あまりの良さに寝てしまったので途中の部分は朧げなのだが、なんといってもクライマックスよ。ポスタービジュアルにもなっている駆けるコット。感傷的で可愛く素晴らしい描写である。初期のアリス(実はディズニーアニメの印象が強くアリス=青のイメージだが、本来は黄の服を着ている)を思わせる服を纏い、今にも泣き出しそうになりながら走る彼女を抱きしめたくなった。
※映画.comより画像引用