散弾銃の男(1961)
監督:鈴木清順
出演:二谷英明、南田洋子、小高雄二、芦川いづみ、高原駿雄、田中明夫etc
評価:95点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
Amazon Prime Videoで鈴木清順のマカロニウエスタン『散弾銃の男』が配信されていたので観た。アマプラの旧作邦画は当たりが多いのだが、これも例に漏れず大傑作だった。
『散弾銃の男』あらすじ
青空にそびえ立つ鷲霊山、麓の町の人々は魔の山と恐れ、誰も登ろうとしない。ある日、一人の男が散弾銃を肩に鷲霊山に登っていった。途中で数人の怪漢が男を襲ったが、逆にたたきつけられた。頂上に近づいた時、現われた男が散弾銃の男を森の中の西岡製材所に案内した。社長の西岡は渡良次と名乗る男に一目惚れして、用心棒になれといった。その夜、良次は西岡の配下の三人組鎌、勝、寅と町に出た。良次らは西岡の情婦春江がマダムをしているバー“ハッピー”に入った。そこでバーの用心棒ジープの政が持っている真珠のネックレスを良次がみつけてハッとした。それは彼の許婚者の持物で、彼女は何者かに殺されてしまっていた。良次はその犯人を探してここまでやってきたのだ。政と良次の喧嘩を町の私設保安官奥村が止めに入った。奥村は愛妻を二ヵ月前に何者かに殺され、犯人捜査のため保安官になった。が、町の人間は奥村を小馬鹿にし、そんな彼に良次は同情した。奥村が暴漢に襲われ負傷した。彼は良次も一味だと思いこんだ。奥村の妹節子だけは良次を信じていた。奥村の後任に良次が決った。西岡は良次を追い出すため政と対決させた。決闘場の山かげの盆地に、良次は奥村を連れて行った。そこには西岡が密栽培しているケシ畠があった。一味は生阿片を密売していたのだ。良次と政の発射する寸前三人組が襲いかかった。が、良次の早射ちに三人は逃げ出した。そこへ西岡組の配下が現われ秘密を知った六人を皆殺しにしようとした。窮地を逃れた三人組は西岡の事務所を襲って、西岡を殺した。三人組は生阿片を奪い、運び屋の黒沼と西岡に監禁されていた節子を連れて逃走した。黒沼のいった取引場所はウソだった。怒った三人は節子に襲いかかった。そこへ良次が現われ彼女を救った。一行は金のある海岸の別荘に向った。三人組の前に良次は例のネックレスを出した。三人の顔色が変わった。火を吐く散弾銃は三人のコルトをふっ飛ばした。そこにかけつけた警官隊の中に政がいた。彼は麻薬取締官だった。
スキヤキウエスタンは味噌汁にナイフが刺さる
森の中、くの字の中で車と男が眼差しを合わせる。鷲霊山は危険だと警告するトラック運転手。だが、散弾銃の男は無視して突き進むのだった。山賊が潜む森、影から眼差しが向けられ急襲される。ここから陰湿な攻防が繰り広げられる。橋を破壊され男は落下してしまうのだ。しかし、彼は怯まない。川辺で服が乾くまで休憩している最中に襲撃しようものなら、散弾銃で脅しをかけるのだ。
本作は山を舞台に西部劇を日本流に置換している。そこで生じるアクションがスタイリッシュで面白い。例えば、食事処でチンピラに絡まれる場面。通常であれば銃で主人公の手元の動きを制圧するのだが、彼らはナイフを投げつける。その過程で、味噌汁にサクッとナイフが刺さる。日本映画でしか観られないような串刺し具合に惹き込まれる。群れアクションは複雑なものとなっており、男と男が殴り合う。そこに酒が注がれる。敵が場外に吹っ飛ばされる。戦いを止めに来た保安官まで場外に吹っ飛ばされてしまい、主人公として立場が悪くなってしまうといった形勢の逆転を軽妙にやってのけるのだ。
そして何と言っても当時の日活、無国籍アクション全盛期だけあって、クライマックス、荒野でのアクションが洋画的リッチさをもっているのだ。だだっ広い海岸で、1対複数人の銃撃アクションが展開される。敵はボロボロになりながら銃で決着をつけようとするのだが、銃口が破損する。銃の破壊により肉弾戦へと切り替わる。主人公はそれまでに「寝る」アクションによって堂々とした風格を醸し出していた。それを最後も継続し、死んだフリで決着をつける。
そして『シェーン』よろしく、こちらでは車で去っていく。
こういうアクションが今の日本に不足しているなと感じるこのところである。