民衆の敵(1989)
原題:গণশত্রু
英題:Enemy of the People
監督:サタジット・レイ
出演:Soumitra Chatterjee,Ruma Guha Thakurta,Mamata Shankar etc
評価:55点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
クライテリオンから発売されているサタジット・レイ晩年BOX収録の『民衆の敵』を観た。
『民衆の敵』あらすじ
In this adaption of the Ibsen stage play, an idealistic physician discovers that the town’s temple waters are dangerously contaminated. But with the community relying on the holy attraction for tourist dollars, his warnings go unheeded.
訳:イプセンの舞台劇を映画化したこの作品では、理想主義的な医師が、町の寺院の水が危険なほど汚染されていることを発見する。しかし、地域社会は観光客向けの聖なるアトラクションに頼っており、彼の警告は聞き入れられない。
ドクターストップに耐えつつレイが描いたものとは?
サタジット・レイは1983年に心臓発作を起こし、医者から負荷のかかる映画制作は控えるようにと言われていた。1988年にようやく緩和されて撮った作品がこの『民衆の敵』である。イプセンに戯曲の中でも最も低い評価であると言われている「民衆の敵」の映画化なのだが、興味深いテーマであるにもかかわらず芸術作品として厳しいものがある点で共通したものがある。
ヒンドゥー教寺院の聖水が町に疫病をもたらしていると考える医師が新聞記者を巻き込んで、危険性を市民へ伝えようとする。しかし、寺院の主は収益が減ることを恐れ妨害していく。その中で、新聞記者の心が折れ、四面楚歌的状況に陥る。ハリウッド映画であれば『エリン・ブロコビッチ』のような熱い展開になるだろう。しかし、本作では医者による制限があったせいもあり、演出コストを下げようとするあまり、映画的魅力が失われている。
テレビ番組のセットのような家の中で延々と議論する。街中の様子は、使い回しあるいは一回のロケで完結したかのようなショットとなっている。カット割を減らすように長回しで顔を捉えていく演出は良いと思うものの、寺院主の妨害がさほど強く見えないので、医師の孤立が際立っていないように感じた。
テーマが面白いだけに残念な作品であった。