密輸業者たち(1967)
原題:Les Contrebandières
英題:The Smugglers
監督:リュック・ムレ
出演:フランソワーズ・ヴァテル、モニーク・ティリエ、ジョニー・モンティエetc
評価:85点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
1968年のカイエ・デュ・シネマベストにて選出されたリュック・ムレ作品『密輸業者たち』を観た。リュック・ムレといえば『ビリー・ザ・キッドの冒険』のようなコミカルな運動を描くイメージがあったが、その暴走っぷりは本作の方が凄まじかった。
■1968年のカイエ・デュ・シネマベストテン
1.アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ)
2.革命前夜(ベルナルド・ベルトルッチ)
3.The Edge(ロバート・クレイマー)
4.世にも怪奇な物語(フェデリコ・フェリーニ他)
5.Don’t Let It Kill You(ジーン・ピア・ルフェーブル)
6.The Time That Are(ピエール・ペロー)
7.バリエラ(イエジー・スコリモフスキ)
8.夜霧の恋人たち(フランソワ・トリュフォー)
9.旋風の中に馬を進めろ(モンテ・ヘルマン)
10.黒衣の花嫁(フランソワ・トリュフォー)
10.密輸業者たち(リュック・ムレ)
『密輸業者たち』あらすじ
Two women run packages and people between warring countries, in this New Wave slapstick takeoff on the action and adventure genre.
訳:二人の女性が、戦時中の国々を行き来しながら、荷物を運んだり、人を運んだりする、アクションとアドベンチャーというジャンルを取り入れたニューウェーブのドタバタ劇。
※IMDbより引用
都市と地方が結合し、リボルバーから機関銃が鳴り響く世界
男が女をビンタし、そのまま服を脱がせる。その手つきはもどかしく、ようやく肌が露出する。最初は嫌がっていたかに思えた女は接吻をする。人と人とが親密な関係になるには、運動が必要であり、その運動と運動とのぶつかり合いが親密さを生むと言いたげにアクションを投げかけることで物語が始まる。車、徒歩を使った追いかけっこは映画の自由さの中でカップルの生活を捉えていく。山奥での運動が突然、都市部のモダンな部屋の一室と繋がるのである。しかし、何事もないかのように登場人物は振る舞う。女は田舎と都市が繋がった映画の中で家事をする。洗濯物を外へと放り投げ、家では洗剤の箱を洗い始める。これは、家族という枠組みの中に押し込められる女性像への批判だろうか?映画は我々のこのような読みすら裏切る。
なぜならば、女性に歩み寄るように見せかけて、フレームの外側からブラジャーのホックを外す今ならセクハラな描写を惜しみなく挿入し、男を見捨てたかと思うとよく分からない場所で石のお椀を使った謎の料理を共に貪り出すのだ。
ひたすら予測ができない。圧倒的なロケーションの中でリュック・ムレが思いついたアクションを展開し、キメラのように繋ぎ合わせているのだから。これが妙な面白さを生んでいる。本作が作られて半世紀以上が経っても、その手数の多さと新鮮さに目を奪われる。例えば、女がリボルバー銃を撃つ場面があるのだが、そこから発する音は機関銃のものとなっている。崖ではRPGゲームのように対立するもののアクションが繰り広げられる。川ではどんぶらこどんぶらこと桶が流れ、そして逆再生で山へと戻っていく。
映像表現の面白さを探求した本作に惹かれるものがあった。
※MUBIより画像引用