がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻(2020)
監督:石田秀範
脚本:浦沢義雄
出演:斎藤千和、土屋希乃、江原正士、鈴村健一、芋洗坂係長、高橋ユウetc
評価:採点不能
昨日、Twitterで「ロボコンが狂ってやがる!」と阿鼻驚嘆している方を見かけた。《ロボコン》といえば石ノ森章太郎が生み出した愛くるしいキャラクターで70年代には特撮ドラマとして人気を博していたキャラクターだ。特撮に疎いので、何故あんな愛くるしいロボットが出てくる映画が狂っているのか理解ができなかった。しかし、脚本家が『ボボボーボ・ボーボボ』でお馴染み鬼才・浦沢義雄だと知り察しがついた。また、Yahoo!ニュースにアップされていたインタビュー記事《『がんばれいわ!!ロボコン』石田秀範監督が語る、悪戦苦闘「タンタンメン」の演技(2020/07/31 早川清一朗)》によると、
――劇中では汁なしタンタンメンがロボコンに「パパー」と飛びついて、チンゲンサイでおっぱいを吸おうとするシーンがありました。これは脚本に書かれていたのでしょうか?
石田 それは僕の発想です。浦沢さんの脚本は、イメージが湧くか湧かないか、それに尽きるんですよ。すべてが見たことない、経験したことないものばっかりなんで。汁なしタンタンメンがおっぱいを吸うにしても、たまたまチンゲンサイが目に飛び込んできたので、それを使ったというだけなんです。
もし発想できなかったら、あのシーンはカットするしかなかった。それくらい綱渡りな撮影だったんですよ。こういうところで演出力が試されるんです。なにも思いつかなかったらお手上げ。本当に恐ろしい本を書かれる方です。
↑散乱するタンタンメンの汁。岡持ちの中身の映像が恐ろしいことになっています。ワクワクしてきますね。
と想像の斜め上をいくことが書かれていました。Twitterの住人が過度に盛っている訳ではなく、これは歴としたニュース記事なのだ。そして、予告編を観ると、いきなり岡持ちが横転し、明らかにタンタンメンではないとロマ映画的毒々しいエキスが散乱するのだ。そしてロボットキャラ・ロビン演じる土屋希乃が棒読みで
「ナーニ ソレ シルガナイジャナイ!」
といい始めるのです。
『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』あらすじ
石ノ森章太郎の漫画を原作に1974年に放送され、99年にも新作が放送された特撮ロボットドラマ「ロボコン」シリーズの20年ぶりとなる新作劇場作品。町の中華屋・全中華に、ロボットスクールから来たお手伝いロボットのロボコン。トルネード婆々のもとへ出前を届けに行く途中、ロボコンはうれしさのあまりに注文のタンタンメンが入ったオカモチを振り回してしまい、タンタンメンがすっかり汁なしになってしまう。この汁なしタンタンメンをきっかけに、ロボコンの恋するロビンをも巻き込んだ地球規模の大騒動に発展してしまう。アニメ映画「人体のサバイバル!」と、短編アニメ「スプリンパン まえへすすもう!」が同時上映。
※映画.comより引用
令和のアポカリプスなう
本作は、『スプリンパン まえへすすもう!』と『人体のサバイバル!』と同時上映されているのだが、3本とも別次元で予想の斜め上をいく狂気を孕んでおり、まさしく地獄の黙示録、「アポカリプスなう」な作品でした。プルーストは『失われた時を求めて』の中で究極の芸術は森羅万象足し合わせても存在せず、その外側にあると語っていたが、本作は大林宣彦が最期の力を振り絞って無限の手数を3時間観客に投げ続けた『海辺の映画館』の先を歩む前衛結晶体になっていた。
前菜にあたる『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』は冒頭60秒で不安になります。ロックなテンションで、中華屋《全中華》で親子が接客をしている。コロナ禍の影響か従業員一同マスクをするきめ細かさに感心するも、天空から屋根を突き破って登場するロボコン(斎藤千和)、そのままオカン伊藤ヨーコ(高橋ユウ)を胡椒で味付けしようとしたり、オトン伊藤カズオ(芋洗坂係長)の頭を岡持ちに突っ込もうとしたり、客の料理をガッツリ平らげたりめちゃくちゃである。そんな破天荒ロボコンは、少年・ヒロシ(屋鋪琥三郎)と共にトルネード婆々(清水ミチコ)の元へタンタンメンを届けることとなる。
しかしながら、ロボコンは岡持ちをブンブン振り回す。すると岡持ちの中でビチャビチャと汁が散乱し、トルネード婆々邸の玄関先で汁を盛大にぶちまけてしまうのだ。そのシークエンスに目がいきがちなのだが、よく注目して欲しいのはヒロシだ。何故かマスクをしていないのです。本作は冒頭だけマスクをする配慮をしているのだが、一番飛沫が散乱するだろう局面でマスクをしなくなってしまうのだ。ただ、そんな細かい演出問題はほんの些細な問題。一度エンジンがかかった暴走特急を止めることは誰にもできません。
「がんばれいわ!」
とタイトルで語っているにもかかわらず今じゃタブー中のタブーの昭和的ギャグ、ロボコンが女ロボット・ロビンの顔を舐め回すセクハラ演出が展開される。そして、トルネード婆々が汁なしタンタンメンを気に入りバズったせいで、店には次々とオーダーが入るのだが、その汁なしタンタンメンの製造方法はロボコンを遵守し、「1.担々麺を作る 2.器を回して汁を散乱させる」を真面目にやってのけるのだ。家族全員が必死に器を回し、汁を拡散される様子を画面四分割で描いていく。
やがて、汁なしタンタンメンに生命が宿る。あの『銀魂』の沖田総悟役でお馴染み鈴村健一の声でタンタンメンがロボコンたちに語りかけてくるのです。出会い頭、ロボコンに「パパッ!パパッ!」と抱きつき、チンゲンサイの手で乳房を吸おうとしてくるのだ。何を食べたらこんなアイデアが浮かぶのでしょうか?さらに、全中華の中華料理に喧嘩を売り、地球を征服しようとするのだ。中華料理軍団とタンタンメンが喧嘩をする常軌を逸した構図は『キラー・コンドーム』を彷彿とします。そして、何故、彼が地球征服するのか理由を尋ねてみれば、ロビンに恋をしたから地球をプレゼントしたいとのこと。ヒロシは「ちょっと何言っているのか分からない」と言うが、大丈夫です。私にもよくわかりません。
ただ、その混沌はさらなる深淵へと観客を導きます。
中華料理に追われ、ロボコンと共に逃走するタンタンメンの前にロビンが現れるのだが、いきなりショットガンをぶっ放し、顔が巨大化してロボコンとタンタンメンを殺そうとしてくるのです。タンタンメンは赤ちゃんから青年に成長し厳つい言葉で語り始める。そして豪華CGの元で地球規模の大喧嘩が始まるのだ。そしてあれやこれやしているうちに、トルネード婆々が拳で解決する。そして、隊列を組んで迫り来るう中華料理がタンタンメンを祝福し、なんとあるはずのない伏線をまるで渾身の回収だと言わんばかりにトルネード婆々とロボコンの関係性を明らかにして映画は終わるのです。
スラップスティックコメディとして観ても破綻しかしていないのだが、しかしこの映画に漲る異次元の面白さを追求するパワーにノックアウトされた。今まで何千本も映画を観てきたが唯一無二のギャグがそこにある。そして、異次元のギャグを延々と並べることにより、点のギャグが点の集合体として映画的怪物になった。そこに底知れぬ面白さを感じた。
この夏イチオシの怪作でありました。
って訳で中華食べます。
HP0だよ、、、 pic.twitter.com/mRSnwrYPwO— che bunbun@映画の伝道師 (@routemopsy) August 2, 2020
↑観賞後、餃子食べに行きました。
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