第三夫人と髪飾り(2018)
原題:Vợ Ba
英語題:THE THIRD WIFE
監督:アッシュ・メイフェア
出演:トラン・ヌー・イェン・ケー、マイ・トゥー・フオン、グエン・フオン・チャー・ミー、グエン・ニュー・クインetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
驚いたことに、ベトナムの超絶スピリチュアル映画『THE THIRD WIFE』が邦題『第三夫人と髪飾り』改め、10/11(金)よりBunkamuraル・シネマ公開が決まりました。一足早く鑑賞したので感想をアップします。
『第三夫人と髪飾り』あらすじ
北ベトナムの富豪のもとへ嫁いできた14歳の第三夫人を主人公に、彼女を取り巻く愛憎や悲哀、希望を、美しく官能的につづったドラマ。ベトナムの新鋭アッシュ・メイフェア監督が自身の曾祖母の実話をもとに描き、世界各地の映画祭で数々の賞を受賞した。19世紀の北ベトナム。14歳の少女メイは、絹の里を治める大地主の3番目の妻として嫁いでくる。一族が暮らす大邸宅には、唯一の息子を産んだ穏やかな第一夫人と、3人の娘を持つ魅惑的な第二夫人がいた。まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎとなる男の子を産んでこそ“奥様”になれることを知る。やがてメイも妊娠し、出産に向けて季節が流れていく中、第一夫人も妊娠していることが判明する。同じ頃、メイは第一夫人の息子ソンと第二夫人のある秘密を知る。出演は「青いパパイヤの香り」のトラン・ヌー・イェン・ケー、「クジラの島の忘れもの」のグエン・ニュー・クイン。
※映画.comより引用
ベトナムの超絶スピリチュアルムービー
そもそもベトナム映画が日本で観られるのは珍しい。映画に詳しい人であれば、トラン・アン・ユンの名前を浮かべると思うだろうが、アッシュ・メイフェアと聞いてピンと来る人はそうそういない。ブンブンも全く知らない監督だったので調べてみました。
そんな『第三夫人と髪飾り』は彼女の家族の歴史に基づいている。アッシュ・メイフェアの祖母が生きた時代のベトナムは一夫多妻制であり、女性は一定の年齢を経るとお見合いに出されます。そして女性は家事をする存在に抑圧され、自分の希望がなかなか叶えられない状態であった。この状況は現代でも様々な地域で観られる。それに対する問題提起として本作が作られました。
実際に観ると、かつて絵画が社会情勢をアーカイブするメディアとして担っていた頃を彷彿とするヴィジュアルで綴られている。セリフは極限にまで削ぎ落とされ、ストーリーも女性が自分の意図に反しておっさんの第三の妻として嫁ぎ、子どもを出産するというのを軸にしているものの、自由自在に風景を撮っているように見える。これにより、いかにして19世紀ベトナムにおいて女性の発言が抑圧されていたのかを物語っている。そして、抑圧された女性の人生の絵画集として95分という短い時間の中に言葉にならない慟哭を凝縮させていく。
水墨画のように美しい山々、自然に囲まれた空間。幾何学的に真っ二つに空間が分かれた場所。物干し竿が、左端にポツンと立つ少女を強調させる。絵画特有の鑑賞者を誘導させる視線の動線を映画に持ち込み、陰日向にいる少女にスポットライトを当て続ける作風からアッシュ・メイフェアの力強いメッセージを感じ取ることができる。アッシュ・メイフェア監督は今後注目の監督だ。そしてそんな彼女の作品が日本で公開されることに嬉しさを感じるブンブンでした。
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