『SKIN/スキン』アカデミー賞短編映画賞受賞作”SKIN”の対極にある世界

SKIN/スキン(2018)
SKIN

監督:Guy Nattiv
出演:Jamie Bell, ダニエル・マクドナルド, Daniel Henshall etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

A24は最近、映画配給業にも力を入れているのですが、製作以外でも個性を発揮していました。それの一つが『SKIN』という作品です。なんと、監督のGuy Nattivは昨年2本の『SKIN』という作品を製作しており、短編映画の方は第91回アカデミー賞短編映画賞を受賞しています。そして今回紹介する長編映画は第43回トロント国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しています。てっきり、本作は短編映画の長編化だと思っていました。

※短編映画の方の記事:『SKIN』第91回アカデミー賞短編映画賞受賞も納得!戦慄の白人復讐劇

『SKIN』あらすじ


A destitute young man, raised by racist skinheads and notorious among white supremacists, turns his back on hatred and violence to transform his life, with the help of a black activist and the woman he loves.
訳:人種差別的なスキンヘッドによって育てられ、白人の至上主義者の間では悪名高い貧困の青年が、黒人活動家と彼が愛する女性の助けを借りて、憎しみと暴力に身を任せて人生を変えた。
imdbより引用

表裏一体の関係

本作はBryon Widnerの実話に基づく物語だ。Bill Brummelのドキュメンタリー『Erasing Hate』に影響され、イスラエル出身監督Guy Nattivが映画化した。ネオナチの集団に所属し、人種差別的で暴力に生きるBryon “Pitbull” Widnerは顔に、差別用語のタトゥーを彫り込み暴れまわっている。そんな中集会でジュリーという女性と出会い、やがてタトゥーを消すことを決断するという内容です。ジュリーを演じるのが、『パティ・ケイク$』で主演を務めたダニエル・マクドナルドで、彼女は短編映画の『SKIN』にも出演しています。

本作は、暴力に生きるBryon “Pitbull” Widnerが黒人の活動家やジュリーたちの愛を受けて、もがき苦しみながらも改心していく課程の合間に、彼が手術に励む姿が挿入される。彼の苦しみと、目を覆いたくなるような痛みが画面全体に伝わってくる。これは、物理的痛みを演出しているだけでなく、今まで自分が信じてきた思想を根本から覆していくことで生じる心理的苦痛を象徴していると言えよう。人種差別を人生の主軸として生きてきた者がそれを消し去る。皮膚の表面を覆った棘が抜き取られ、皮膚の下にある本心が晒される。それによって彼は自分の内面と対峙せざる得なくなる。皮膚に埋め込まれたヘイトは誇りではなく、呪縛であることに気づいていくのです。自分の思想を改める映画は多いが、本作は《皮膚》という象徴を効果的に使い、力強い物語を形成していたのです。

また、短編映画『SKIN』では、ネオナチが黒人に暴力を振るい、黒人集団が彼を誘拐して全身にタトゥーを入れ黒人にしてしまうという内容であった。蝶番のような関係にあるこの二作品は相互に影響し合っているので、両方観ることによって面白さと奥深さが増幅するのです。

日本公開は2020/5/9より東京・新宿シネマカリテにてですが、是非とも劇場公開する際は短編映画もくっつけて上映してほしいなと感じました。

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