【ネタバレ酷評】『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』:『アベンジャーズ/エンドゲーム』ダメダメ派の気持ちが分かった件

ヒックとドラゴン 聖地への冒険(2019)
How to Train Your Dragon: The Hidden World

監督:ディーン・デュボア
出演:Jay Baruchel, America Ferrera, F. Murray Abraham etc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、サプライズニュースが入ってきました。何と傑作ファンタジーアニメーション『ヒックとドラゴン』最終章が12/20(金)に日本公開決まりました。『ヒックとドラゴン』シリーズは、総合映画情報サイトオスカーノユクエによると1作目が441館公開に対して1億3000万円の興行収入しか上げられていない(1館あたり約29万円)大コケをしてしまい、続編の劇場公開が見送られた作品。続編の『ヒックとドラゴン2』はゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にも『ベイマックス』を脅かす存在として君臨するほど海外批評家評がすこぶる高かった。そして日本公開を求め、署名活動まで行われたのですが、結局一般劇場公開は実現せず、東京アニメアワードフェスティバル2015やしたまちコメディ映画祭in台東のプレイベントで上映されるに留まった。ブンブンもフランス留学中、この続編を鑑賞し、圧倒的爽快感と空中アクションの面白さに惹き込まれ、当時全力で応援した記憶があります。

そんな不遇の『ヒックとドラゴン』シリーズですが、前作の熱烈な署名活動が功を奏したのか、宣伝はギャガ、劇場営業は東宝東和の体制で最新作が日本公開することに決まりました。そんな最新作『ヒックとドラゴン3(How to Train Your Dragon: The Hidden World)』を一足早く鑑賞したのですが…水を差すようで大変申し訳ありません。かなり残念な作品でした。この感覚は『アベンジャーズ/エンドゲーム』酷評派の意見と近いものを感じました。

当記事では、『アベンジャーズ/エンドゲーム』と比較して、『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』の問題点について語っていきます。ネタバレ全開記事なので、『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』両方ご覧になった方だけ読んでください。

『ックとドラゴン3』あらすじ

When Hiccup discovers Toothless isn’t the only Night Fury, he must seek “The Hidden World”, a secret Dragon Utopia before a hired tyrant named Grimmel finds it first.
ブンブン訳:ヒックがトゥース以外にナイトフューリーがいることに気付いた時、暴君グリムメルよりも先にドラゴンのユートピア《隠された世界》を見つける必要が出てきます。
imdbより引用

厨二病全開の世界観健在

冒頭、ヒックが囚われたドラゴンを救助するために、降臨する。業火の劔をビシッと構え、眩いほどの炎の中から現れるその雄姿に厨二病心を揺さぶられる。『ヒックとドラゴン』シリーズの醍醐味はこういった厨二病心を刺激するアクションがあることだ。ドラゴンとの友情努力勝利で、窮地を脱する様の清々しさ全開で幕を開ける。

本作は、最終章ということなので全編お祭りモードだ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』が卒業式のような重く涙滴る雰囲気だったのに対して、こちらは卒業式後の謝恩会。親子先生諸共和気藹々と飲んで食ってどんちゃん騒ぎするあのノリに等しい。ひたすらに、人間賛歌とドラゴン賛歌を掲げる世界観に我々は誘われ、まるでその国の住人のように祭りを楽しむ。

そこに、遊戯王ファンの心踊るブルーアイズホワイトドラゴン(ライト・フューリー)が現れる。滅びの爆裂疾風弾《バーストストリーム》を放つ白いメスドラゴンが本作の鍵を握ります。ただ、そこから雲行きが怪しくなってくるのです。

人間とドラゴンの別れによる崩壊

ライト・フューリーと出会ったことで、ドラゴンのユートピア《隠された世界》を知るヒックたち。ヒックの国はドラゴンを救助し、迎え入れることをし続けた結果、過密状態となり、国家崩壊の危機に晒されている。そこで、ドラゴンをユートピアに連れていき、人口を減らそうと考えるのだ。確かに、このテーマは難民問題を裏に隠しているように見える。難民を受け入れたが為に、国が沈みそうになる。そこで難民が自立し、自分たちの国に去っていくことを望む。先進国の理想を反映させたようなテーマとなっている。

しかしながら、最終章にしてそのテーマをもってくることは非常に危険だと思う。というのも1作目、2作目共にドラゴンとの共存をテーマにしてきたからだ。人間の言葉が喋れなく、尚且つ脅威となる武器を持っているドラゴンを恐れ、迫害してきた者が、歩み寄ることでドラゴンを理解し、共に生きる道を作り上げてくる。その軌跡を説教くさくならないようにアクション描写で緩和したことで評価されてきたシリーズだと言える。

ここに来て、人間とドラゴンを真っ二つに分けようとするのは、多様性のドラマとしてどうなのかと疑問を抱かずにはいられない。無論、前作から感じていて人口爆発、過密問題に対する解を用意したいという気持ちはよく分かる。現実世界では大きな問題となって、結果的に難民を押し付けあっている状況が続いているからだ。

もちろん、本作はファンタジーだ。理想的な答えでハッピーエンドはアリだとは思う。問題は、そこが気になってしまうほど周辺の演出が弱いところにあります。これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』酷評派と近いものを感じます。『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、正直11年積み上げて来たものを無茶苦茶な理論で蹴りつける作品だ。よくよく考えたら、タイムスリップで石を盗んで死んだ仲間を復活させようという考え自体、御都合主義の極みで、ラストは復活した仲間とサノスが激突する無茶苦茶な展開が眼中に飛び込んでくるのだ。いつかやってくる終わりを楽しみにして毎作観てきた映画ファンの中には、この展開にブチギレル方もいました。ブンブンの場合は、それを差し引いても大傑作だと感じた。それは、高度なまでの過去作からの引用、そしてあまりに愛を感じるスケールの大きすぎるアクションと驚きの展開にワクワクハラハラさせられたからだ。

それを考えた上で『ヒックとドラゴン3』を観ると、あまりに話とアクションのスケールが小さい。話は、悪党グリムメルよりも先に《隠された世界》を見つけるというものなのだが、そもそもグリムメルがどれだけ暴君なのかがわからない。ヴィランとしてのカリスマ性がなく、ただヒックの前に現れてトゥースを誘拐するコソ泥にしか見えないのだ。サノスは、要介護おじいさんのようにヨボヨボなんだけれどもそこに漂うオーラは圧倒的カリスマ性があった。暴君として、ラスボスとしての強みがあった。それがグリムメルにはないのです。

また、アクションも、前作ではまるで我々観客もドラゴンに乗っているかのような浮遊感があり、3方向の位置を活かしたアクションがなされていた。海を疾走するトゥースに爽快感すら抱いた。さらに、ドラゴン同士の戦いをバックに人間同士の戦いを入れることで、心が燃える乱戦を強調させていたところも好感度が高かった。それが本作では全然ないのです。ドラゴンの飛翔は夜が多く、見えづらかったりする。またドラゴン同士の連携プレイは希薄で、精々トゥースとライト・フューリーのコンビネーションしか魅せてくれません。結局のところ、人間とドラゴンって心通じ合っていないのではと思ってしまう分断されたアクションに悲しくなりました。

もちろん、人間とドラゴンのヌルヌルとしたノンバーバルコミュニケーションの妙は健在だったのですが、前作の凄みを経てこれは幾ら何でも悲惨なのではと感じてしまいました。

最後に…

ギャガさん、東宝東和さん、本当にごめんなさい。折角、公開までこぎつけてくださったのに水を差してしまい。ただ、やはりダメなものはダメなので、今回酷評となりました。嗚呼、無念。

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