ドリーム(2016)
HIDDEN FIGURES(2016)
監督:セオドア・メルフィ
出演:タラジ・P・ヘンソン,
オクタビア・スペンサー,
ジャネール・モネイ,
ケビン・コスナー,
キルステン・ダンストetc
評価:80点
第89回アカデミー賞3部門(作品賞、助演女優賞、脚色賞)にノミネートされ、邦題問題で大炎上をした問題作「ドリーム」が遂に日本で公開された。原題の「HIDDEN FIGURES」はFIGUREという非常に多層的な意味を持つ単語で、「隠された人々」とも「隠された数値」とも「隠された形(差別の)」とも捉えることが出来る凄いタイトルだ。
しかし当初邦題は、「ドリーム 私たちのアポロ計画」と、キング牧師の名台詞「I have a dream.」と宇宙計画=アポロ計画を掛け合わせた安直なものとなっていました。しかも本作は、マーキュリー計画を扱った作品にも関わらず、「アポロ計画」と全く別物の歴史事象をタイトルに持ってきた点にTwitterで批判が相次ぎ大炎上。
邦題は結局「ドリーム」とSEO的にもあんまりなものとなってしまった。現にTwitterで「ドリーム」と検索しても、本作の感想はなかなか出てこない。
しかしながら、実際に映画館へ足を運ぶと、いつもガラガラなTOHOシネマズ海老名、それも平日レイトショーなのに8割型席が埋まっていたのだ。こんな邦題でも良い映画には人が集まる、日本もまだ捨てたもんじゃないと感じた。ってことで、今回はこの問題作「ドリーム(HIDDEN FIGURES)」を解説していきます。
「ドリーム」あらすじ
時は1960年代。ソ連が世界で初めての有人宇宙飛行を成功させつつあった。焦りを隠せないアメリカはNASAに、有人宇宙飛行を成功させようとする。そんな宇宙開発競争の裏側には、アメリカ人ですら知らない3人の黒人リケジョの姿があった。監督は「ヴィンセントが教えてくれたこと
」のセオドア・メルフィ(「ジーサンズ
」の脚本も手がけている)。
HIDDEN FIGURESの名に恥じない名脚本
ブンブンを驚かせたことは、劇場の盛り上がりっぷりの他にもう一つある。それは想像の5倍も面白かったというところだ。差別に立ち向かう黒人女性映画と聞くとデフォルトで一定の高評価に留まりがちだ。面白いし、大切な映画だが、なんか物足りなかったりする。
本作は、凄まじい脚本の力、演出の力で、隠された差別の形を解き明かしながらも娯楽性を保有し続ける、今のアカデミー賞受賞作が忘れてしまったポテンシャルを持っている。
例えば、黒人用トイレに行く為に片道800mもある距離をヒールで走る、黒人数学者を嫌という程魅せる。漏れるか漏れないかサスペンスとしてのハラハラを十分魅せ、観客が忘れた頃に違う形で同じ構図を魅せる。これぞ娯楽性と社会的メッセージの最高バランスだ。
他にも、嫌味を言う白人上司が、「偏見はないのよ」と言う。すると「分かっているわ」と一見、和解したかのように見せかけて、「貴方がそう思い込んでいることを」とカウンターパンチを不意に浴びせる描写がある。
更には、
「NASAが女性を採用したのは、職場の華だからじゃない、眼鏡を掛けているからよ」
「NASAでは皆小便の色は一緒だ」
といった映画史に残る名台詞が数多登場する。流石に全部紹介するわけにもいかない。これはゼッタイ映画館で確認してくれ!
」の監督を依頼されていたのを断って本作を製作したらしいって話も含めて、今後注目株の監督&脚本家と言えよう。
本作に出てくる3人のリケジョの勇姿を見ると、同じエンジニアとして仕事を頑張りたくなる。今一番多くの人に観て欲しい作品でした。皆さんも是非、3人のリケジョが差別を乗り越えて難しい問題への解決策をFigure out(見つけ出す)していく様子に燃えてください!
警告:邦題問題に関わった映画ファンに告ぐ
邦題にいちゃもんつけたり、火炎瓶を投げつけた人は「必ず」金を払って本作を観ること。
さもなくば、良作が日本の劇場で観られなくなるでしょう。
セオドア・メルフィ監督or脚本作ブンブンレビュー
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